セッション情報 シンポジウム18(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

IgG4関連疾患の概念と診断

タイトル S18-基調講演:

IgG4関連疾患の病理学的特徴

演者 能登原 憲司(倉敷中央病院・病理検査科)
共同演者
抄録 【目的】IgG4関連疾患の病理学的特徴は、1)高度のリンパ球、形質細胞の浸潤を伴う線維化、2)多数のIgG4陽性形質細胞の浸潤、3)花筵状線維化(storiform fibrosis;SF)、4)閉塞性静脈炎、とされるが、臓器によっては組織像が異なることもある。そこで諸臓器のIgG4関連病変を病理学的に再検討した。【方法】膵(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis;LPSP)21例、肝外胆管5例、唾液腺14例、後腹膜3例、腎(尿細管間質性腎炎)2例、肺(炎症性偽腫瘍)3例、リンパ節8例を検討した。後腹膜1例、腎2例、肺2例の生検例を含むが、それ以外は切除例である。診断に際してIgG4免疫染色を行い、本検討の中で組織像とCD163免疫染色の対比を行った。【成績】21例のLPSPのうち17例では、4つの組織学的特徴が揃っていた。SFには多数のCD163陽性樹状マクロファージ(CD163+DM)が認められた。CD163+DMは小葉内・膵管病変にも多数認められ、通常はSFと認識できなかったが、構造の破壊と線維化をきたすとSFの像を示した。4例は消退傾向の強いLPSPで、CD163+DMも減少していた。肝外胆管、後腹膜、腎、肺にみられる病変も膵と類似し、炎症の強い部分ではCD163+DMが集簇し、さまざまな程度に線維化をきたしていた。唾液腺での炎症の主体は小葉内で、腺房細胞の破壊・消失とリンパ球・形質細胞浸潤、著明なリンパ濾胞の形成がみられた。線維化は小葉間にみられたが、小葉間組織や周囲脂肪織への炎症細胞浸潤は軽度であった。時に線維化のない炎症を認め、唾液腺に特異な所見であった。CD163+DMは、炎症をきたした小葉内に多数存在していた。SFや閉塞性静脈炎は稀であったが、小葉構造の破壊、線維化をきたすとSFが形成されることもあった。リンパ節は、リンパ濾胞と形質細胞の過形成を認めるのみで、炎症性偽腫瘍を形成した1例を除き、線維化、SF、閉塞性静脈炎はみられなかった。【結論】諸臓器にみられるIgG4関連病変の組織像は類似しているが、唾液腺やリンパ節のように異なっているものもある。病理診断に当たっては臓器ごとの特徴を理解しておくことが重要である。
索引用語 IgG4関連疾患, 自己免疫性膵炎