セッション情報 |
シンポジウム14(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)
機能性消化管障害の病態と治療
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タイトル |
S14-基調講演:機能性消化管障害の病態研究最前線
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演者 |
本郷 道夫(公立黒川病院DELIMITER東北大病院・総合診療部) |
共同演者 |
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抄録 |
慢性的に消化器症状がありながら、症状の原因となる客観的所見を同定できない病態を機能性消化管障害と呼び、Rome財団による組織的系統的検討が始まって20年あまりが過ぎた。系統的研究が始まるまでは、「気持ちの持ちよう」「患者の不満の表現形」といった捉え方が多かった。そのため、神経性胃炎や神経性大腸炎といった呼称が用いられた時期がある。一方で消化器症状発現の客観的機序の説明として消化管運動機能異常に対する認識が高まった。しかし消化管運動異常では必ずしも症状発現の説明が困難であることから、次には内臓知覚過敏としての捉え方が進んだ。一方で、消化器症状は心理社会ストレスとの関連が深く、自律神経機能との関連からの解析も進められている。近年の研究では、感染後の微細炎症の遷延が症状発現に関わることが指摘されている。また、生活習慣が及ぼす影響、自律神経機能の変調、心理社会ストレスへの影響を一元的に説明する考え方も現れてきている。さらに、腸内細菌の与える影響については、大規模な研究が進められ、炎症との関連、生活習慣との関連、自律神経および脳機能との関連など、きわめて多彩な方面への影響があることがあきらかにされつつある。同じ現象に対して多因子で説明するよりも、一元的に説明できる理論が構築されれば、治療もまた単純になるものと思われる。また、その根幹となる原因が、消化器症状を誘発し、一方で消化管運動異常を呈すること、そして生活習慣の変調が根幹の原因に影響をおよぼす、といった、これまでにわかっている要素を単に因果関係で結びつけるのではなく、もっと他の要素から引き起こされる独立の現象と考えると、これまでの研究を一気にまとめあげることも可能になるかもしれない。現在の研究は、その終盤にさしかかっているのではないかと期待している。 |
索引用語 |
機能性消化管障害, 病態生理 |