セッション情報 シンポジウム18(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

IgG4関連疾患の概念と診断

タイトル 内S18-10:

IgG4関連肝・膵病変におけるIgG4産生制御機構としての制御性T細胞の意義に関する検討

演者 内田 一茂(関西医大・消化器肝臓内科)
共同演者 岡崎 和一(関西医大・消化器肝臓内科)
抄録 【目的】わが国に多い1型自己免疫性膵炎(LPSP)は、しばしば胆管癌やPSCと鑑別困難な硬化性胆管炎(IgG4-SC)の合併を認める。これら胆管病変と膵病変の病態ついては不明な点が多く、今回、IgG4の意義や産生制御機構の解明のために、制御性T細胞を中心として、膵病変をアルコール性腫瘤形成膵炎と胆管病変をPSCと比較検討した。【方法】腫臨床的に膵腫瘤を呈した腫瘤形成性膵炎19例(LPSP;9例、アルコール性膵炎(ALCP);10例)の切除膵組織と硬化性胆管炎と診断された47例(IgG4-SC;18例, PSC;29例)の肝生検/切除組織を用いて、FoxP3およびIgG1,IgG4陽性細胞について免疫化学組織学的に検討した。【結果】1)膵組織の検討: Foxp3陽性Treg(LPSP:15.3±3.0cells/HPF vs ALCP:1.7±0.5cells/HPF)、IgG4陽性細胞(LPSP:20.0±6.0cells/HPF vs ALCP: 2.1±0.9cells/HPF)、IgG1陽性細胞(LPSP:7.6±2.4cells/HPF vs ALCP:12.1±1.8cells/HPF)、IgG4/IgG1陽性細胞比(LPSP:2.72±3.0 vs ALCP:0.18±0.09)といずれもLPSPで有意(<0.05)に高値であった。IgG4陽性形質細胞とFoxp3陽性Tregは正の相関を認めた(R=0.906、P<0.05) 。2)肝組織の検討:門脈域を中心に、Treg浸潤(IgG4-SC:5.33±1.53 cells/HPF vs PSC:2.04±1.59 cells/HPF), IgG4陽性細胞浸潤(IgG4-SC:14.3±6.86 cells/HPF vs PSC:3.58±0.60 cells/HPF)、IgG4/IgG1陽性細胞比(IgG4-SC:3.084±1.824 vs PSC:0.424±0.068)とIgG4-SCで有意に高値であった(P<0.05)。Foxp3陽性Tregは正の相関を認めた(R=0.75、P<0.05)。LPSP,IgG4-SCのいずれににおいても、対照疾患群と比較してTreg、IgG4陽性細胞ともに増加し、有意な相関を認めた。しかしながら、PSC29例中3例(10%)において、高IgG4血症や門脈域にIgG4陽性細胞とTreg細胞の浸潤をみとめた。【結論】IgG4関連肝胆膵疾患においては、Treg増加がIgG4産生に関与する可能性が示唆されるが、PSCの一部症例でも認められたことより診断には注意が必要である。
索引用語 制御性T細胞, IgG4関連疾患