セッション情報 シンポジウム18(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

IgG4関連疾患の概念と診断

タイトル 消S18-11:

自己免疫性膵炎におけるIgG4産生と輸送メカニズム

演者 佐伯 恵太(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 金井 隆典(慶應義塾大・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【目的】自己免疫性膵炎(以下AIP)はIgG4関連疾患の一表現型であり、血清IgG4抗体の上昇や膵臓内IgG4の局在が知られている。しかし、AIPにおけるIgG4の産生、輸送、抗原特異性、病態関与については全く不明である。今回、AIP末梢血中Bリンパ球サブセットを詳細に解析し、IgG4産生細胞とIgG4輸送機構について検討を行った。【方法】文面による同意の得られたAIP患者および慢性膵炎、膵癌患者および健常人より末梢血を採取し、比重遠心法により末梢血単核球(PBMC)を分離し、T、B細胞関連分子をフローサイトメトリーで解析した。また、MACSビーズを用いてCD19+IgD+ B細胞を分離し種々の刺激下に培養し、フローサイトメトリー解析を行った。【結果】AIP患者では対照群と比較し、PBMCに IL-4発現CD4+ Th2細胞の有意な増加とCD19+CD27+CD38highIgD- 形質細胞の著明な増加を認めた。本末梢血形質細胞には細胞膜表面IgG4発現は認められないものの、血清IgG4濃度依存性に細胞内IgG4発現を認めた。形質細胞以外の免疫担当細胞ではCD19+CD27-IgD+ ナイーブB細胞やCD14+ 単核球にも血清IgG4濃度依存的に細胞内IgG4の存在が認められた。また、健常人PBMCよりCD19+IgD+ B細胞をAIP患者血清存在下に培養した結果、経時的な細胞内IgG4発現の上昇を認めた。さらに、健常人またはAIP患者より分離したCD19+IgD+ B細胞を抗CD40抗体、IL-4、IL-21存在下で培養した結果、AIP患者においてCD19+CD27+メモリーB細胞への分化がより高率に誘導された。【考察】AIP患者ではTh2免疫反応の亢進によって、B細胞および形質細胞の分化異常が誘導されることが示唆された。さらに、炎症膵臓のみならず末梢血中にもIgG4陽性形質細胞の著明な増加を認めたが、形質細胞以外にもB細胞や単球にもエンドサイトーシス機構によってIgG4が取り込まれており、膵臓局所へIgG4サブクラスをキャリアー細胞として輸送する新たな抗体輸送システムの存在が示唆された。(共同研究者;土井知光、中村雄二、海老沼浩利、朴沢重成)
索引用語 IgG4, エンドサイトーシス