抄録 |
【目的】内視鏡検査でおこなわれている中等度鎮静(意識下鎮静)の妥当性と安全性、至適な鎮静薬剤使用法を明らかにする。【方法】内視鏡と鎮静をkey wordに論文検索し、RCTに基づく臨床研究結果を中心に知見を整理し、推奨される適切な鎮静を提案する。【結果】(1)無麻酔と中等度鎮静の比較:3つのRCT(全て上部消化管内視鏡)、1つのメタ解析論文が抽出された。A)無麻酔に比して中等度鎮静(ミダゾラムMZ単独、ジアゼパムDP単独、またはMZ+塩酸ペチジンPZ)では満足度が2.3倍、再検査希望率は1.3倍に向上した。B) MZ+PZ群では成功度(技術的達成度が完全かつ患者満足度が良好)76%、無麻酔群46%、Odd比は3.77倍であった。C) 無麻酔群の平均SpO2=98%に比して、MZ群ではSpO2=92%と有意に呼吸抑制が生じたが、MZ量が約5mgと本邦平均の約2倍であることを留意すべきである。(2)ベンゾジアゼピン系薬剤(BZ)間での比較:MZとDPを比較した8つのRCTが抽出された(すべて上部消化管内視鏡)。A) 両群間で患者満足度、術者満足度は同等。B) 同一の薬剤による再検査希望率および検査を受けた記憶がない率は、DPに比してMZで高かった。C) 呼吸循環抑制は両群に差はなかったが、静脈刺激性はDPで有意に強かった。(3) BZ単独とBZ+鎮痛剤を比較:2論文が抽出され、全て上部消化管内視鏡。両群間で患者満足度・呼吸循環抑制に差はなく、BZ+鎮痛剤群で術者満足度は向上した。本邦ではBZ+鎮痛剤は呼吸抑制が強くなると考えられており、日本人特有の反応に留意する必要がある。【推奨案】(1)内視鏡において中等度鎮静は妥当である。(2)鎮静の要件は、患者満足度・術者満足度の向上、最小の呼吸・循環抑制、短時間の回復、である。(3)上部消化管内視鏡検査ではBZ単独によって上記要件が達成でき、MZがDPに比して有用。(4)大腸内視鏡など疼痛を伴う内視鏡手技では、BZ単独に比してBZ+鎮痛剤は有効であるが、RCTでのエビデンスに乏しい。日本人においてBZ+鎮痛剤では呼吸循環抑制率が高くなり、十分はモニターと血管確保が必要である。 |