抄録 |
[目的]ERCPにおけるmidazolamの鎮静効果を明らかにする.[方法]過去3年間にERCPを行った1891例のうち手技後に患者の苦痛度が評価可能であった1598例を対象に,患者の手技中の鎮静度,患者の苦痛度,鎮静と偶発症の関係について検討した.midazolamは症例により0.05~0.13mg/kgを初期投与量とし鎮静の状態により適宜追加投与した.[結果]対象の内訳は男性964例,女性634例で平均64.2歳(14~96歳),midazolam初期投与量は平均0.064mg/kg,総投与量は平均0.074mg/kg(0.05~0.23)であった.鎮静度を体動 (なし/軽度/高度)により評価すると,初期低用量群(0.06mg/kg以下;n=935)では31.9/50.6/16.6%,初期中用量群(0.07~0.15mg/kg;n=663)では41.1/46.8/12.0%であり,初期中用量群で体動なし例が有意に多かった(p=0.009).手技終了後の患者の各苦痛度(覚えていない/なし/軽度/中等度/高度)の割合は,総投与量低用量群(n=668)では23.3/17.0/37.4/21.4/0.9%,中用量群(n=914)では24.1/8.7/33.3/31.0/2.8%,高用量群(0.16mg/kg以上;n=16)では50.0/0/37.5/12.5/0%であり,苦痛なし例が低用量群で有意に多く(p=0.0006),苦痛中等度例は中用量群で有意に多かった(p=0.003).また,各苦痛度別の時間当たりのmidazolam投与量は2.8/4.1/2.9/2.1/1.9μg/kg/minと高度の苦痛を訴える群では時間当たりの投与量が少ない傾向がみられた.鎮静によると考えられる偶発症では血圧低下とSpO2低下がみられたが,酸素吸入以外に処置を要したものはそれぞれ1例ずつのみであった.その他の偶発症は膵炎33例,出血4例,その他2例で,体動度別では,体動なし (n=572)/軽度 (n=791)/高度 (n=235)で1.1/2.4/4.5%と体動が高度になるにつれて偶発症の頻度が増したが,苦痛度別では一定の傾向はみられなかった.[結論]Midazolamによる鎮静は,通常用量(0.15mg/kg以下)の使用においては安全に使用でき,体動の抑制には0.07~0.15mg/kgの初期投与が有効と考えられた.また,手技時間が長時間にわたる場合には,投与量を増やすことにより患者の苦痛軽減が図れることが示唆された. |