セッション情報 シンポジウム22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

ERCP関連手技による合併症とその予防

タイトル 内S22-1:

ERCP関連手技における偶発症と膵炎発症の危険因子

演者 加藤 新(手稲渓仁会病院・消化器病センター)
共同演者 真口 宏介(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 潟沼 朗生(手稲渓仁会病院・消化器病センター)
抄録 【目的】ERCP関連手技の偶発症率と重症度ならびにERCP後膵炎の危険因子について検討する。【方法】2011年2月までに施行した3915例(男2332、女1583、平均年齢68.4歳)を対象とした。診断的ERCP230(5.9%)、治療ERCP3685(94.1%)であり、初回乳頭は1840(47%)である。偶発症は、膵炎、穿孔、胆管炎、出血とし重症度はCottonに準じた。検討項目は1)偶発症率と重症度、2)手技別の偶発症率、3)対処と転帰、4)ERCP後膵炎に関わる因子(性別、年齢、初回乳頭、EST、EPBD、膵管造影、IDUS、EPS/ENPD)とした。【結果】 1)全偶発症率は4.2%(165)であった。内訳は、膵炎2.2%(85;重症10,中等症17,軽症58)、穿孔0.4%(17;8,7,2)、胆管炎0.9%(35;0,12,23)、出血0.7%(28;1,14,13)であった。2)診断的ERCPでは7.4%(17/230);膵炎6%(14)、胆管炎0.5%(1)、出血0.5%(1)、穿孔0.5%(1)。治療的ERCPのうちESTで4.8%(36/754);膵炎1.6%(12)、胆管炎0.8%(6)、出血1.7%(13)、穿孔0.7%(5)、EPBD 8.7%(8/92);膵炎7.6%(7)、胆管炎1.1%(1)。膵炎予防を目的としたEPS留置での膵炎発症率は4.5%(4/88)であったが,重症はなかった。同じく膵炎予防を目的としたENPDでは0.4%(1/246)であった。3)膵炎;重症10例中3例に持続透析など集学的治療を要したが軽快した。穿孔;重症、中等症の15例は全例、胆道ドレナージなどにより軽快したが、1例は無効であり開腹手術を行った。胆管炎;35例中13例で追加の胆道ドレナージを要した。出血;28例中26例(重症1、中等症14、軽症11)に内視鏡的止血術を行った。このうち輸血を要したのは重症1、中等症6であり、全例軽快した。全偶発症例で直接死亡は無かった。4)膵炎に関わる因子としては、女性、初回乳頭、EPBD、膵管造影、IDUSが有意であった。【結論】 全偶発症率は4.2%で、膵炎は2.2%と最も高かったが死亡例はなかった。ERCP後膵炎に関わる因子は、女性、初回乳頭、EPBD、膵管造影、IDUSが有意であった。EPS/ ENPDの膵炎予防効果につき有意差はなかったが、ENPDが予防に寄与する可能性がある。
索引用語 ERCP偶発症, ERCP後膵炎