セッション情報 シンポジウム14(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性消化管障害の病態と治療

タイトル 消S14-3:

大腸鏡・CTコロノグラフィーから見た過敏性腸症候群(IBS)の病態と治療選択

演者 水上 健(国立久里浜医療センター・内科)
共同演者 鈴木 秀和(慶應義塾大・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 IBSの病態は脳腸相関異常・知覚過敏・腸管運動異常とされ、大腸検査で器質的異常がないこととされるが近年は器質的疾患除外のためIBS診断・治療過程で大腸鏡を施行されることが多い。これまで我々は鎮痙剤により正常者の腸管運動を抑制して大腸鏡を施行すると「大腸鏡」自体の心理的負荷でIBSの遷延性腸管運動異常が惹起され下痢型のほとんどに遷延する蠕動が、便秘型 の一部に遷延する分節型運動が見出されたことを報告した【消化器心身医学2009 16(1)】。その後の検討で遷延性腸管運動異常が観察されないIBSの存在が確認され、同群では排便症状の契機となるストレスを自覚せず発症時期に生活変化が多くみられ、症状の特徴として硬便に続く大量の軟便・下痢を認め、下行結腸間膜やS状結腸回転異常などの腸管形態異常があることが判明した【消化器心身医学 2010 17(1)】。従来困難であった腸管形態の立体的描出と評価がCTコロノグラフィー(CTC)により可能となった。症状の原因となるストレスを自覚していないIBS 58例を大腸鏡とCTCで検討したところ、通過障害の要因と考えられる捻じれが全例で見いだされた。捻れの口側の腸管径が2倍以上拡張しているものが下痢症状を有するIBSに有意に高頻度に見いだされた(下痢型89% vs 混合型85% vs便秘型49%)。腸管形態異常を有するIBS患者の下痢症状にはS状結腸軸捻転症や大腸イレウスの腸管内容が水様便であることと同様のメカニズムが関与していると思われた【消化と吸収 2011 4(3)】。大腸画像検査により器質的疾患の除外とともにストレスで誘発される「腸管運動異常型IBS」とストレスの関与のない「腸管形態異常型IBS」に分類して病態に応じた効果的な治療選択が可能である。特に新しい概念である「腸管形態異常型IBS」では少量の緩下剤と腸管形態に合わせた腹部マッサージ・エクササイズにより全例で腹痛・排便回数の改善をみている。実際の診断・治療過程を含めて報告する。
索引用語 過敏性腸症候群, 大腸鏡