セッション情報 シンポジウム22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

ERCP関連手技による合併症とその予防

タイトル 内S22-6:

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後膵炎の危険因子とメシル酸ナファモスタット予防的投与の有用性

演者 大内田 次郎(宮崎大・腫瘍機能制御外科学)
共同演者 旭吉 雅秀(宮崎大・腫瘍機能制御外科学), 千々岩 一男(宮崎大・腫瘍機能制御外科学)
抄録 【背景】内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後膵炎発症の軽減や予防を目的に,ERCP後膵炎に対するメシル酸ナファモスタット(フサンR)の予防投与効果に関してprospective, double-blinded, randomized controlled trial を行ったので報告する.【方法】2008年9月から2011年2月までERCPを施行した800例を対象とし,5%ブドウ糖注射液500mLに溶解したフサン20mgをERCP開始と同時に2時間かけて投与する群(投与群:400例)と5%ブドウ糖注射液500mLだけを2時間かけて投与する群(プラセボ群:400例)のいずれかに無作為に割り付けた. ERCP後膵炎の診断および重症度判定にはCottonの診断基準を用い,ERCP後膵炎の危険因子について検討した.【結果】ERCP後膵炎は800例中39例(4.9%)に認められ,軽症35例,中等症4例,重症1例であった.投与群は400例中13例(3.3%),プラセボ群は400例中27例(6.8%)と有意に投与群で膵炎発症は低率であった(p=0.0231).単変量解析では検査時間挿管困難,フサン非投与,膵管造影などの17因子がERCP後膵炎発症の有意な危険因子であったが,多変量解析ではフサンの非投与と膵管造影が有意な危険因子として抽出された.800例のうちERCP施行初回例は316例で(投与群:154例,プラセボ群:162例),そのうち31例(9.8%)に膵炎を認め,投与群が9例(5.8%),プラセボ群が22例(13.6%)と初回症例の検討でも有意に投与群のERCP後膵炎は低率であった(p=0.0208).単変量解析では女性,検査時間,挿管困難,膵管造影,フサン非投与など9因子が有意な危険因子であったが,多変量解析ではフサンの非投与,膵管造影,女性が有意な危険因子として抽出された.【結語】メシル酸ナファモスタットの予防投与はERCP後膵炎の発症頻度を低下させることが示唆された.
索引用語 ERCP, 膵炎