セッション情報 シンポジウム22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

ERCP関連手技による合併症とその予防

タイトル 内S22-7:

ERCP後膵炎発症予防に対するカモスタットメシル酸塩の有用性の検討(ウリナスタチンvs.カモスタットメシル酸塩の無作為化比較試験)

演者 加藤 慶三(成田赤十字病院・消化器内科)
共同演者 万代 恭史(成田赤十字病院・消化器内科), 福田 和司(成田赤十字病院・消化器内科)
抄録 【目的】カモスタットメシル酸塩は,蛋白分解酵素阻害薬の内服薬であり,慢性膵炎の治療として広く使用されている.他の同系薬と比べ,阻害する膵酵素の種類が多く,作用が強いとの報告がある.今回ERCP前後にカモスタットメシル酸塩を使用し,ERCP後膵炎の発症予防として効果があるか,ウリナスタチンと比較検討し,明らかにする.【方法】対象は当科にて2009年4月より2011年3月までにERCPおよびERCP関連手技を受けた症例を無作為に2群(U群・C群)に分けた.それぞれ132:137例,179:181回行った. U群はウリナスタチン15万単位をERCP施行直前に5分間かけて静脈内投与した.C群はカモスタットメシル酸塩をERCP施行30分前に600mg内服させ,翌日,2日後は朝昼夕の3回,200mg内服させた.術後膵炎の発症率・膵炎の重症度・血中膵酵素の変化について比較検討し,膵炎発症の危険因子についても検討した.【成績】膵管造影はU:Cで69: 75回行い,ESTは77: 72例に行い,EPBDは10:13例に行い,治療内容に差はなかった.膵炎の発症は7例(3.9%): 4例(2.2%)あり,差はなかった (p=0.3485).U群で1例のみ重症となったが,全例保存的治療で軽快した.ERCP前後の膵酵素の変化は同等であった。膵炎の有無で有意差を認めた因子は,EPBD(4/11 vs.19/349 : p=0.001)とB-II法術後胃(2/11 vs.7/349 : p=0.006)と手技時間(中央値45.5 vs.26.3分 : p=0.007)であり,使用薬剤による差はなかった(p=0.350).膵炎に寄与する因子は多変量解析で,EPBD(odds比18.12, 95%CI 1.83-179.35, p=0.013),手技時間(10分増加:odds比1.433, 95%CI 1.083-1.898, p=0.012)であった. 【結論】ERCP後膵炎発症予防として,カモスタットメシル酸塩はウリナスタチンと同等の効果であった.ERCP後膵炎発症の危険因子はEPBDと手技時間であった.EPBD施行例、カニュレーション困難例や処置に時間のかかる症例は膵炎の危険が高いため注意が必要である.
索引用語 カモスタットメシル酸塩, ERCP後膵炎