セッション情報 シンポジウム22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

ERCP関連手技による合併症とその予防

タイトル 内S22-8:

ジクロフェナク坐剤によるERCP後膵炎予防に関する無作為化比較試験

演者 大塚 大河(佐賀県立病院好生館・肝胆膵内科)
共同演者 川添 聖治(佐賀県立病院好生館・肝胆膵内科), 野田 隆博(唐津赤十字病院・内科)
抄録 【目的】NSAIDs坐剤によるERCP後膵炎予防効果は無作為化比較試験およびメタ解析で報告されているが,使用されている用量は本邦のものより高用量である.本邦における常用量でERCP後膵炎予防効果が認められるかジクロフェナク坐剤を用いて検証した.【方法】ERCP実施症例をジクロフェナク投与群と非投与群に無作為割り付けした.ジクロフェナクは50mgをERCP実施30分前に経直腸的に投与した.体重が50kg未満の症例は25mg投与とした.主要評価項目はCottonの基準に基づいたERCP後膵炎,副次評価項目は高アミラーゼ血症,腹痛,および試験薬による有害事象とした.ERCP施行医と評価項目判定医には盲検化した.試験開始2年目に中間解析を行うこととし,検定の多重性はα消費関数で調整した.【成績】2009年3月より試験を開始し,2年目終了時に中間解析を行ったところ有意に投与群で膵炎発症が少なかったため試験中止とした.104例が適格例であった(投与群51例,非投与群53例).全症例中12例にERCP後膵炎を認め(11.5%),投与群では2/51例(3.9%),非投与群では10/53例(18.9%)であった(p=0.017).投与群ではすべて軽症であったが,非投与群では3例が中等症であった.多変量解析でジクロフェナク投与は独立因子であった(OR:0.10,95%CI:0.01-0.51).高アミラーゼ血症は投与群と非投与群で有意差は無かった.ERCP後の腹痛は投与群が非投与群に比べ有意に少なかった(7.8%:37.7%,p<0.001).試験薬による有害事象は認められなかった.【結論】ジクロフェナク坐剤は本邦における常用量でもERCP後膵炎予防効果がある.ジクロフェナク坐剤予防投与は簡便で安価であり,かつ安全な方法である.
索引用語 ERCP後膵炎, NSAIDs