セッション情報 シンポジウム22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

ERCP関連手技による合併症とその予防

タイトル 内S22-16:

胆管挿入困難例に対するERCP後膵炎予防のための自然脱落型膵管ステント留置の有用性

演者 酒井 裕司(千葉大大学院・腫瘍内科学)
共同演者 露口 利夫(千葉大大学院・腫瘍内科学), 横須賀 收(千葉大大学院・腫瘍内科学)
抄録 【背景と目的】熟練した内視鏡医が施行しても胆管挿入困難例は存在し、胆管挿入困難例はERCP後膵炎の危険因子と言われている。今回我々は胆管挿入困難例に対し、処置を試みた後にERCP後膵炎予防のために自然脱落型膵管ステントを挿入した群(P(+))と膵管ステントを挿入しなかった群(P(-))を比較し、自然脱落型膵管ステントがERCP後膵炎の予防に有用かを検討した。【方法】2005年4月から2010年7月までの間に当院で施行したERCP2618例のうち、通常のカテーテルによる造影法にてERCPを試みた症例のうち15分で胆管挿入が不能であった198症例を胆管挿入困難例と定義した。男性124例、女性74例、平均68.2歳、疾患は胆管結石86例、胆道癌52例、膵臓癌38例、慢性膵炎5例、PSC4例、良性胆道狭窄4例、AIP2例、術後胆汁ろう2例、HCC2例、卵巣癌1例、胆嚢ポリープ1例、APBDU1例であった。胆管挿入のためにprecutを133例、膵管ガイドワイヤー留置法(P-GW)を62例、両方ともを用いたものが36例であった。これら198症例をP(+)群とP(-)群で膵炎を含めた偶発症に関し比較検討した。使用した膵管ステントは、5Fr.3cm(GEENEN PANCREATIC STENT: COOK Medical Corp.)あるいは 5 Fr.4cm(ZIMMON PANCREATIC STENT: COOK Medical Corp.)であった。【結果】最終的な胆管挿入率は94.5%であった。胆管挿入困難198例のうちP(+)群は99例、P(-)群は99例であった。P(+)群でERCP後膵炎の発症は3.0%(3/99)、腹痛の発症は3.0%(3/99)、ERCP後アミラーゼ(AMY)値の平均は353.031±520.792 IU/lでありP(-)群と比較するとERCP後膵炎の発症は11.1%(11/99)、腹痛の発症は20.2%(20/99)、ERCP後AMY値の平均は541.204±771.843IU/lであり2群間に有意差(P<0.05)を認めた。2群間の患者背景、疾患、ERCP前AMY値、precut施行率、P-GW施行率には有意差を認めなかった。その他の偶発症は認めなかった。【結語】胆管挿入困難例に対し、膵管ステントを挿入することはERCP後膵炎の予防になる可能性が示唆された。
索引用語 ERCP後膵炎, 膵管ステント