セッション情報 |
シンポジウム22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
ERCP関連手技による合併症とその予防
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タイトル |
内S22-17:傾向スコア解析(propensity score analysis)を用いた脱落型膵管ステントのERCP後膵炎予防効果の検討
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演者 |
竹中 完(神戸大・消化器内科) |
共同演者 |
藤田 剛(神戸大・消化器内科), 早雲 孝信(神戸大・消化器内科) |
抄録 |
【背景・目的】脱落型膵管ステント(以下PSDS:pancreatic spontaneous dislodgement stent)がERCP後膵炎(以下PEP:post ERCP pancreatits)を予防することが明らかにされているがその適応に関しては明確な基準が示されておらず、当院では術者がPEPのhigh risk群と判断した症例にPSDSを留置しているのが現状である。【対象・方法】そこで今回我々は、これまでに留置してきたPSDSがPEP予防に有用であったのかを確認すべく、2006年4月から2009年2月までに当院で施行された、乳頭が生理的でない症例(EST後乳頭、膵管非融合、乳頭切除対象症例、膵管ドレナージ例、膵頭十二指腸切除後)を除くERCP施行連続1245例(男性810例、女性435例、平均年齢65.2歳)を対象に、傾向スコアを用いて検討した。膵炎、重症度の定義にはCotton criteriaを用いた。【結果】158例(12.7%)にPSDSが施行され、ステント群、非ステント群の背景因子には年齢、挿管時間、検査時間、膵管造影、膵管IDUS、膵管ブラシ細胞診、pre-cut、ESTの各因子でかたよりが認められたが、対象がある群に属する確率を数値化し、ランダム化されていない群間での違いを統計学的に調整するために用いられる傾向スコア解析にて上記のかたよりをなくすことができた。PEPは重症1例(0.08%)、中等症8例(0.6%)、軽症97例(7.8%)の計106例(8.5%)に認められ、死亡例は0例であった。ステント群での膵炎発生率は7%(11/158)であり、非ステント群では9%(95/1087)と両群間に有意差は認められなかったが(p=0.55)、傾向スコア解析すると、膵炎発生率はステント群7%(11/158)、非ステント群15%(24/158)となり、有意にステント群で膵炎発生率は低い結果となり(p<0.05)、PSDSは有意にPEPを予防していたことが明らかとなった。【結語】傾向スコア解析にてPSDSのPEP予防効果を証明しえた。RCTでは検討対象から外れる、有合併症例や、同意が得られない症例なども含めた、より実臨床に基づいたデータでの解析であり、PSDSの有用性をより広く証明できたと考えられた。 |
索引用語 |
ERCP後膵炎, 脱落型膵管ステント |