セッション情報 シンポジウム22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

ERCP関連手技による合併症とその予防

タイトル 消S22-18:

ERCP後高危険群に対する予防的膵管ステント留置後の膵炎発症の危険因子に関する多施設共同研究

演者 伊藤 啓(ERCP後膵炎Study Group)
共同演者 菅野 敦(ERCP後膵炎Study Group), 松林 宏行(ERCP後膵炎Study Group)
抄録 背景および目的:急性膵炎はERCP後の最も重要な偶発症である。ERCP後膵炎の高危険群に対する、予防的膵管ステント留置の有用性が報告されている。予防的膵管ステント留置後のERCP後膵炎の危険因子について、多施設共同研究による検討を行った。対象および方法:2002年7月から2010年1月までに、7施設でERCP関連手技を行った9192例のうち、ERCP後高危険群で予防的膵管ステントを留置した414例(男246例、女168例、平均年齢68歳)を対象に検討した。用いたステントは、カテックス社製の5Frの片pigtail型ステント(Pit-stentTM)である。ERCP後膵炎の頻度、重症度、膵炎の危険因子について検討した。膵炎の診断および重症度はCottonらの分類に準じた。結果:膵管ステント留置の適応は、胆管挿管困難192例、膵液細胞診または膵管生検95例、precut 40例、膵管口切開術29例、女性28例、乳頭切除術25例、乳頭括約筋不全12例、膵炎の既往10例であった。ERCP後高アミラーゼ血症は64%に認められた。膵炎の発症率は9.9%(41例、軽症37例、中等症2例、重症2例)であった。単変量解析では膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)が膵炎の危険因子であった(OR 2.9, 95% CI 1.2, 7.1)。多変量解析でもIPMNが膵炎の独立した危険因子であった(OR 3.1, 95% CI 1.2, 7.8)。IPMNで膵炎を発症した例は、発症しなかった例に比較して有意に主膵管径が小さかった (3.0 ± 1 mm vs 4.7 ± 2.6 mm, P = 0.0037)。結論:ERCP後高危険群に対する予防的膵管ステント留置例の膵炎の発症率は9.9%であり、多くは軽症例であることから、ステント留置が膵炎の頻度、重症度を軽減している可能性が示唆された。主膵管の拡張のないIPMNでは、ERCP後膵炎の予防のための膵管ステント留置は不適切な可能性があり、更なる検討が必要である。
索引用語 ERCP後膵炎, IPMN