セッション情報 シンポジウム23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器癌の画像診断における基本読影:癌の浸潤・進展を読む-リンパ節・血行性・播種性転移・直接浸潤-

タイトル 消S23-2:

仮想内視鏡による胃癌の深達度診断

演者 古川 和宏(名古屋大大学院・消化器内科学)
共同演者 宮原 良二(名古屋大附属病院・光学医療診療部), 後藤 秀実(名古屋大大学院・消化器内科学DELIMITER名古屋大附属病院・光学医療診療部)
抄録 【目的】消化管領域のCT画像は、MDCTの登場により、より薄いスライス厚で高速な撮影が可能となり、画像解像度は向上した。また、3次元再構築することで作成される仮想内視鏡像(以下VG) では、内視鏡に類似した画像を作成し自在に観察することが可能となり、造影MDCT検査のMPR像を用いると、造影効果をもとに超音波内視鏡(以下EUS)と近似した画像が作成できるため、腫瘍深達度についても情報を得ることができるようになった。そのためCTの診断能は向上し、今後は深達度診断への応用も期待される。今回我々は、胃癌の深達度診断におけるVGの有用性について検討した。【方法】2005年1月から2010年12月までの間に、名古屋大学医学部附属病院において、術前の病期診断のためにdynamic MDCTとEUSを施行した138症例144病変(男性103名、女性35名、平均年齢65.7歳)を対象とした。VGは、名古屋大学大学院情報科学研究科で開発されたソフトウェア(NewVES)を用いて作成した。VGとMPR像を連動させて、EUSと類似した観察方法で深達度診断を行い、1)VGを用いた胃癌の病変描出率の評価、2) VGとMPR像を用いた深達度診断の正診率の評価及び3)EUSを用いた深達度診断との比較を行った。【成績】1)VGの病変描出率は64.6%(93/144)であった。深達度別では、T1a、T1b、T2以深の描出率は、それぞれ40%(28/70)、78.6%(33/42)、100%(32/32)と、有意差(p<0.001)を認めた。2) VGとMPR像を用いた深達度診断の正診率は81.9%(118/144)であった。その内overstaging、understagingした症例は、それぞれ15.3%(22/144)、2.8%(4/144)であった。overstagingした症例の54.5%(12/22)に潰瘍もしくは潰瘍瘢痕を認め、understagingした4症例は全例が低分化型腺癌かつ非充実型であった。3)EUSの正診率は83.3%(120/144)であり、両モダリティの正診率の間に差を認めなかった(P=0.855)。【結論】VGはEUSと同等の深達度診断能を有すると考えられた。また、早期胃癌の描出率の向上が今後の課題であると考えられた。
索引用語 仮想内視鏡, 胃癌