抄録 |
MRIにおいては、長軸方向の腫瘍の進展範囲が捉え易いことと、組織特異性のコントラストが強みであり、MRCP、息止めT2強調画像や造影3次元T1強調画像によって、腫瘍の進展範囲を決定してゆく。まず、胆道癌の診断においては腫瘍が壁外浸潤傾向の少ない乳頭腺癌であるのか、壁外浸潤しやすく脈管を巻き込みやすい管状腺癌であるかを術前にある程度認識しておく必要がある。この鑑別に関しては造影平衡相においてより強く濃染される腫瘍が管状腺癌優位の腫瘍であり、管腔内隆起性で、平衡相の染まりがmildで、拡散強調画像で高信号を呈する腫瘤が乳頭腺癌であることが多い。脈管浸潤は手術の成否を左右するため、その有無は重要であるが、腫瘍が脈管に接触しているだけで確たる巻き込みを呈していない場合には造影剤による染まりのパターンや拡散強調画像の結果が参考になる。また、拡散強調画像では、特にskipした胆道癌や、播種の同定に有用である。なお、胆道癌においてはMRCP上で膵胆管合流異常の合併をみることも診断の参考となる。膵癌のMR診断においては、MRCPで主膵管の狭窄分節を特定した後、脂肪抑制T1強調画像によって、随伴性膵炎以外の膵実質中に低信号となる腫瘤を同定する。造影3D T1強調画像の動脈相で染まらず、平衡相で淡く染まる腫瘤を見出し、周囲臓器との連続性を観察することが基本となる。なお、MRCPでIPMNを発見し、その追跡を行う症例が増えているが、その中にTS1の通常型膵癌を発見する機会が増えているので注意したい。さらに、自己免疫性膵炎では、T2強調画像で低信号のrim signや拡散強調画像でびまん性の著しい高信号を呈することや、異常信号内を非拡張主膵管が通過することから膵癌との鑑別に有用である。胆道癌や膵癌のリンパ節転移については今のところ有効な診断方法が乏しい。USPIOなどの特異的造影剤を用いて、リンパ節内の癌巣を同定する試みがなされているが、現時点では研究の域を出ていない。 |