セッション情報 シンポジウム14(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性消化管障害の病態と治療

タイトル 消S14-5:

慢性偽性腸閉塞の腸管蠕動評価におけるシネMRIの有用性

演者 大久保 秀則(横浜市立大・消化器内科)
共同演者 高橋 宏和(横浜市立大・消化器内科), 中島 淳(横浜市立大・消化器内科)
抄録 【目的】これまでシネMRIは絞扼性イレウスや腸管癒着の診断など、下部消化管の器質的疾患への有用性が報告されているが、機能的異常の診断への有用性は報告が少ない。今回、下部消化管機能性異常の中で最も重篤である慢性偽性腸閉塞(CIPO)症例を対象に、シネMRIを用いた腸管蠕動評価の有用性を検討した。【方法】厚労省診断基準を満たすMRI禁忌のないCIPO患者10人と健常者10人に対してシネMRIを施行。撮影条件をb-TFE sequence、TR 4.1ms、TE 2.0ms、flip angle 80°、slice thickness 10mm、matrix 256、FOV 380mmで統一し、これを16秒間の息止め下で行った。腸管径の経時変化を解析し、平均腸管径、収縮周期、収縮率を両群の間で統計学的に比較した。【結果】CIPO群は健常者群に比べ、平均腸管径が有意に大きく(44.1 ± 17.1mm vs 10.8 ± 4.0mm p<0.001)、収縮率は有意に低値であった(18.7 ± 20.9% vs 70.6 ± 11.4% p<0.001)。一方で、収縮周期に有意差は認めなかった(7.54 ± 2.63s vs 7.35 ± 1.41s p=0.76)。シネMRIは、腸管拡張の有無のみならず、動画として評価することで従来の静止画像では評価不可能であった蠕動に関しても容易に視認可能であった。特に協調運動の保たれた有効な蠕動運動と、to-and-fro型の無効な蠕動運動の鑑別において有用であるため、病変部位の特定が十分可能であった。今回の検討で、CIPO症例の中でも、さまざまな蠕動障害のパターンが存在することが判明した。【結論】シネMRIは従来のマノメトリー法と比較し、簡便で低侵襲、被曝を伴わず多くの施設で実施可能である。さらに、マノメトリー法は特定の数か所のポイントの評価に限局するのに対し、シネMRIは腸管拡張や蠕動の評価においても全小腸の連続的解析が可能である。今回の検討で、シネMRIはCIPO患者の腸管蠕動評価、さらに病変部位の特定に非常に有用な手段であることが示唆された。
索引用語 慢性偽性腸閉塞, シネMRI