セッション情報 シンポジウム24(消化器外科学会・消化器病学会合同)

腹膜播種を伴う胃癌に対する治療の問題点と戦略

タイトル 外S24-1:

腹膜播種を伴う胃癌症例に対する外科切除の意義

演者 寺島 雅典(静岡がんセンター・胃外科)
共同演者 徳永 正則(静岡がんセンター・胃外科), 坂東 悦郎(静岡がんセンター・胃外科)
抄録 【はじめに】他に非治癒因子を有さない腹膜転移陽性胃癌に対して原発巣切除が行われることもあるが、その意義に関しては不明である。今回、腹膜転移以外に非治癒因子を有さない胃癌患者における、原発巣切除の意義を明らかにすることを目的に以下の検討を行った。【対象および方法】過去6年間に当院にて外科的切除もしくは化学療法を行った前治療歴のない腹膜転移陽性胃癌287例中、他に非治癒因子を有さない148例(男女比90:58、平均年齢63歳)を対象とし、臨床病理学的背景、生存期間を検討し、Cox比例ハザードモデルを用いて独立予後予測因子の抽出を行った。【結果】腹膜播種陽性例の背景因子としては未分化型(112例; 76%)、4型胃癌(122例; 82%)の頻度が高く、生存期間中央値(MST)は13カ月であった。原発巣切除が82例(55%)で行われ、原発巣切除に引き続き、化学療法を施行した55例のMSTは16ヶ月と良好であったが、多変量解析では、原発巣切除の有無は独立予後予測因子として選択されず(P=0.618)、化療施行の有無(P=0.021)、治療前PS(P<0.001)、および肉眼型(P=0.009)が選択された。更に播種の程度が明らかであった106例を対象として予後因子について解析すると、化学療法の有無、PS,肉眼型に加え、胃癌取り扱い規約第12版における播種の程度が独立予後予測因子として選択された。第12版におけるP1症例でR0,1手術が可能であった18例のMSTは26ヶ月と良好であった。【考察】他に非治癒因子を有さない腹膜転移陽性進行胃癌に対する原発巣切除の意義は少ないと考えられ、治療成績の向上のためには早期の化学療法導入が可能となる術式を選択すべきである。但し、P1症例でR0,1手術が可能な場合は積極的な切除も考慮されるべきである。
索引用語 胃癌, 腹膜播種