抄録 |
【背景】胃癌腹膜転移症例の予後は不良であり,手術を施行する意義は不明である.一方化学療法に関しては様々な薬剤開発により予後は確実に改善しつつある.今回我々は,ここ最近の当院における腹膜転移症例に対する治療をretrospectiveに検討した. 【目的】当院における腹膜転移を有する胃癌患者の手術意義を検討する.【対象と方法】2004年1月から2008年12月までの5年間に当院一般消化器外科にて手術が施行された腹膜転移症例のうち,術後化学療法センターに紹介された症例をretrospectiveに検討した.【結果】この5年間に当院一般消化器外科にて手術が施行された腹膜転移症例は93例であった.そのうち術後化学療法センターに紹介された症例数は51例{試験開腹(腹腔鏡):17例,バイパス術:3例,胃切除術:31例(CureB:4,CureC:27)}であった.初回化学療法は経口抗がん剤を含むレジメン42例(S-1:21,S-1+CDDP:12,S-1+CPT11:4,その他: 5例),点滴のみのレジメン7例(CPT-11+CDDP:2,5FU:5)であった.手術後化学療法開始までの期間中央値(試験開腹(腹腔鏡)症例:18日,胃切除症例:33日)であり,化学療法を開始できない症例は2例であった.胃切除群の予後は非切除群と比較して有意に良好とは言えなかった.(生存期間中央値:胃切除群623日,非胃切除群495日,P=0.652).多変量解析ではS-1+CDDP療法が予後改善に寄与することが示唆された.【結論】化学療法前に手術を行うことにより経口抗がん剤を含む治療が可能になる症例が存在した.胃切除自体は予後改善には寄与しなかったが,S-1+CDDP療法が予後改善につながる可能性が示唆された. |