抄録 |
【背景】新規抗癌剤により生存期間の延長が認められるようになり、腹膜播種に対する集学的治療の効果が期待されている。【目的】腹膜播種における審査腹腔鏡の診断的有用性を明らかにし、S-1+Docetaxel療法の有用性と効果的な手術のタイミングを明らかにする。【方法と結果】1)S-1+biweekly DOC化学療法の効果発現までの時期:進行胃癌35例を対象とした臨床第II相試験で、S-1+Docetaxel併用化学療法(S-1:2W投与2W休薬、DOC:35mg/m2, day1, 15、1コース4W)の奏効率は40%、Disease control rateは77%であり、特に低分化型12例で奏効率は50%、Disease control rateは92%と良好であった。PR inまでの中央値は44日(26-235日)であり、PR duration timeの中央値は162日(55-708日)であった。S-1+Docetaxel療法の効果発現までの時期は4~6週間と考えられる。2)審査腹腔鏡の有用性:関連施設を含めて、術前の画像診断でP0と診断されたcStageIII・IV(T4)胃癌78例に対して審査腹腔鏡を行い、23例(29.5%)でP1またはCY1であった。3)腹膜播種に対するS-1+DOC化学療法と手術:12例にS-1+Docetaxel併用化学療法(S-1:2W投与2W休薬、DOC:35mg/m2, day1, 15、1コース4W)を行い、9例(9/12, 75%)に手術が施行でき、手術症例のGrade 1b以上の病理学的奏効割合は55.6%(5/9)であり、down stagingは77.8%(7/9)に得られた。【考察】高度進行胃癌において、審査腹腔鏡は術前診断に有用であり、画像診断でP0とされた症例でも約1/3に腹膜播種が認められた。全身化学療法を2コース(8週間)行った後に評価を行い、down stagingが期待できる。S-1+Docetaxel療法は有害事象も多くなく、組織学的奏効からみても術前化学療法として有用である。腹膜播種に対して審査腹腔鏡を行い、化学療法から外科手術を行うことで予後の改善が期待できる。 |