セッション情報 シンポジウム24(消化器外科学会・消化器病学会合同)

腹膜播種を伴う胃癌に対する治療の問題点と戦略

タイトル 外S24-7:

胃癌腹膜播種に対するS-1併用Docetaxel腹腔内投与の多施設第I/II相臨床試験と今後の治療戦略

演者 木下 淳(金沢大・消化器・乳腺・移植再生外科DELIMITER胃癌腹膜播種研究会)
共同演者 伏田 幸夫(金沢大・消化器・乳腺・移植再生外科DELIMITER胃癌腹膜播種研究会), 藤村 隆(金沢大・消化器・乳腺・移植再生外科DELIMITER胃癌腹膜播種研究会)
抄録 【目的】今回、我々は胃癌腹膜播種症例に対する S-1併用Docetaxel (DTX) 腹腔内投与の多施設第I/II試験を実施したので報告する。【方法】腹膜播種を伴う高度進行胃癌を対象として、全例に審査腹腔鏡を実施し、肉眼的、病理学的に腹膜播種が証明されている事を適格基準とした。S-1 80mg/m2を2週投与2週休薬し、DTXをday1、day15に腹腔内投与(1コース4週)し、2コース終了後に再度、腹腔鏡検査 or開腹術を行い治療効果判定を行う事とした。第I相試験では、S-1の投与量は固定、DTXの量を35mg/m2から5mg/m2毎に50mg/m2までdose escalationし用量制限毒性(DLT)、最大耐用量(MTD)、推奨投与量(RD)を決定した。第II相試験では、第I相試験でのRDを用い、1年生存割合をprimary endopointと規定し、治療完遂率、化学療法の奏功割合、腹水細胞診陰性化をsecondary endpointとした。【結果】2007年2月~10月までに12名が第I相試験に登録された。全症例が2コースを完遂後、腹腔鏡検査or 開腹術が施行された。DLTの出現は認めず、第I相試験の結果、DTXのRDは45mg/m2と決定した。第II相試験(2007年11月~2010年11月)では27名が登録され、全体の1年生存率は70%、2年生存率は34%、MSTは16.2ヶ月であった。治療完遂率は89%(24/27)であった。原発巣の奏功率はCR/PR/SD/PD:0/6/18/3、播種巣の奏功率はCR/PR/SD/PD:3/8/12/3であった。80%(16/20)の症例に腹水細胞診の陰性化を認めた。播種巣の奏功後に外科的切除を施行した治療群(n=14)の1年生存率は92%で、非切除群(n=13)の46%に比較し有意に良好であった(p=0.008)。【考察】S-1併用Docetaxel (DTX) 腹腔内化学療法は、標準治療の選択肢になりうると考えられたが、更なる治療成績の向上には、分子標的治療薬を用いた個別化治療が必要と考えられる。我々は腹膜転移の増殖進展に関わり、他臓器癌において臨床応用されている標的分子VEGFに着目し、その同定と投与法について検討したので基礎的検討も加えて報告する。
索引用語 胃癌, 腹膜播種