セッション情報 シンポジウム24(消化器外科学会・消化器病学会合同)

腹膜播種を伴う胃癌に対する治療の問題点と戦略

タイトル 外S24-8:

腹膜播種を伴う胃癌に対するS-1+Paclitaxel経静脈・腹腔内併用療法

演者 石神 浩徳(東京大附属病院・外来化学療法部)
共同演者 甲斐崎 祥一(東京大大学院・腫瘍外科学), 北山 丈二(東京大大学院・腫瘍外科学)
抄録 腹膜播種を伴う胃癌に対するS-1+Paclitaxel経静脈・腹腔内併用療法および奏効例に対する胃切除の治療成績について報告する。【対象】P1またはCY1初発胃癌80例。【方法】審査腹腔鏡によりP1またはCY1を確認した後、胃切除は施行せず、腹腔ポートを造設した。S-1+Paclitaxel経静脈・腹腔内併用療法を施行し、原則として肉眼的根治が望める状態にまで奏効した症例を手術適応と判断した。その具体的条件は、腹水細胞診が陰性化し、画像診断上明らかな非治癒因子を認めないこととした。更に審査腹腔鏡により腹膜播種に対する奏効を確認した上で、開腹手術に移行した。術後は可及的速やかに化学療法を再開した。非切除例では化学療法を増悪まで継続した後、二次治療に移行した。【結果】80例中45例に手術を施行した。手術症例の背景は、年齢57(28-86)歳、P0CY1/P1: 6/39例、規約第12版P1/P2/P3: 5/11/23例であった。術前に中央値3 (1-16)コースの化学療法を施行した。術式は胃全摘/幽門側胃切除: 40/5例、合併切除臓器は脾/膵/結腸/付属器: 17/3/11/6例、リンパ節郭清はD2/D1+: 26/19例であった。腫瘍遺残R0が29例(64%)で達成され、組織学的にはgrade 1b以上の奏効が32例(53%)で確認された。術後、縫合不全および膵液瘻を各2例に合併したが、保存的に軽快した。術後再発・増悪を26例(腹膜14例、腹膜以外12例)に認め、無再発生存期間中央値は19.6ヵ月であった。生存期間中央値(MST)は34.5ヵ月、1年生存率88%、2年生存率63%であった。播種の程度別では、P0CY1および旧P1(計11例)の2年生存率81%に対して、旧P2・P3(計34例)では54%であった。一方、切除に至らなかった35例では腹膜播種がより高度な症例が多く、MST 15.8ヵ月、1年生存率70%であった。【結論】腹膜播種を伴う胃癌に対して、S-1+Paclitaxel経静脈・腹腔内併用療法と胃切除による集学的治療は安全かつ有効である。現在、P1初発胃癌を対象として、本化学療法とS-1+CDDP療法を比較する第III相試験を計画中である。
索引用語 胃癌, 腹膜播種