セッション情報 シンポジウム25(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

IBDの治療戦略 :内科治療の限界と外科治療へのタイミング

タイトル 消S25-1:

難治性潰瘍性大腸炎に対するタクロリムス治療の手術回避効果とその背景因子に関する検討

演者 松浦 稔(京都大大学院・消化器内科学)
共同演者 仲瀬 裕志(京都大大学院・消化器内科学), 千葉 勉(京都大大学院・消化器内科学)
抄録 【背景】当院では難治性潰瘍性大腸炎に対してタクロリムス(Tacrolimus;以下,Tac)による治療を積極的に行ってきたが,これらの治療が奏功せず手術に至る症例も少なからず存在する.今回我々は,Tac治療導入後の治療後経過をretrospectiveに追跡し,Tac治療の手術回避効果とその背景因子について検討した.【方法】対象は2001年4月から2011年3月までに当院にてTac投与を行ったステロイド依存性・抵抗性潰瘍性大腸炎患者30例(重症13例,中等症17例).Tac平均投与期間は14.4ヶ月(0.5-65ヶ月),観察期間中央値は35.6ヶ月(2-90ヶ月)であった.Tac治療導入後,手術に至った症例(手術群)とそれ以外(非手術群)に分け,その臨床的背景因子(重症度,年齢,罹病期間,Cytomegalovirus(CMV),治療反応性,Infliximab(IFX)追加投与)ついて検討した.さらにTac抵抗性または治療後再燃例にIFX治療を追加導入した15例についても同様の検討を行った.尚,治療効果判定はLichitiger Index 4以下を寛解と定義し,Tac投与開始4週間後に寛解に至った症例を治療反応群とした.またCMV感染については腸管組織を用いたreal-time PCR法にて判定した.【成績】Tac投与開始4週間後の寛解導入率は60.0%(18例/30例)で,Kaplan-Meier法によるTac治療の累積大腸非切除率は89.7ヶ月で68.4%であった(手術群 9例, 非手術群 21例).Tac投与時にCMV陽性を示す群では手術に至る症例が有意に多かった(CMV陽性群:6例/13例,CMV陰性群0例/6例).その他の臨床的背景因子については手術群と非手術群との間に有意差を認めなかった.またTac抵抗性または治療後再燃例のうち,IFX投与時にCMV陽性を示した8例中5例(62.5%)でIFX治療の追加により手術回避が可能であった.【結論】Tacは難治性潰瘍性大腸炎に対して良好な手術回避効果を有すると考えられた.またTac抵抗性あるいはTac治療後再燃を示すCMV感染合併症例に対してはIFXがSalvage治療の1つとなる可能性が示唆された.
索引用語 潰瘍性大腸炎, タクロリムス