セッション情報 |
シンポジウム25(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)
IBDの治療戦略 :内科治療の限界と外科治療へのタイミング
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タイトル |
消S25-2:難治性潰瘍性大腸炎に対するタクロリムス経口投与の治療効果と限界
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演者 |
久松 理一(慶應義塾大・消化器内科) |
共同演者 |
三好 潤(慶應義塾大・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】新たなにタクロリムスが承認され,難治性潰瘍性大腸炎に対する治療効果が期待されている.今回,難治性潰瘍性大腸炎に対する経口タクロリムスの有効性,安全性,および観察期間内における予後について検討した.【方法】2009年7月以降に当院にてタクロリムスを経口投与された難治性潰瘍性大腸炎38例を検討対象とした.平均投与期間は7.4ヶ月(0.3~18ヶ月),平均観察期間は11.6ヶ月(1~20ヶ月)であった.治療成績としてLichitiger Index,内視鏡所見についてはEndoscopic Activity Index (EAI)で評価した.さらに観察期間内における有害事象と1年間観察しえた21例の手術移行率ついても検討を加えた.【成績】目標トラフレベルに達するまでの日数は推奨されている方法では平均11.3日であったが,当院で行っている連日採血法では平均4.2日に短縮することが可能であった。治療効果としては,投与前Lichitiger Indexは平均11.8であったが,投与開始2週間後平均5.4,3ヶ月では平均5.5であった.寛解(スコア≦4),有効(10点以下,3点以上の低下)と定義すると2週間後の治療反応性は76%,3か月時点での寛解導入率は46%,有効率は30%であった.タクロリムス投与開始前後で内視鏡所見を検討し得た27例のうち,3ヶ月後のEAIは18例で改善を認めた.有害事象としては腎機能障害が1例,高カリウム血症が3例,筋痛1例,低マグネシウム血症(≦1.4mg/dl)が24例であり,感染症としてカリニ肺炎1例,C. difficile腸炎2例を認めた.1年間観察しえた21例の手術移行率は33%(7/21)であった。手術を回避できた14例の維持療法はタクロリムス単独1例,タクロリムスとチオプリン製剤併用が6例,インフリキシマブ3例、チオプリン製剤単独2例、それ以外2例であった.【結論】タクロリムスの経口投与は難治性潰瘍性大腸炎に対して高い寛解導入効果と安全性を示し,さらに内視鏡所見改善効果を有することが明らかとなった.しかし一方で再燃を認め外科手術に至った症例も約3割存在し適切な寛解維持療法が課題と考えられた。 |
索引用語 |
潰瘍性大腸炎, タクロリムス |