セッション情報 シンポジウム25(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

IBDの治療戦略 :内科治療の限界と外科治療へのタイミング

タイトル 消S25-3:

重症潰瘍性大腸炎に対するHybrid Tacrolimus療法の試み

演者 藤井 俊光(東京医歯大・消化器内科)
共同演者 長沼 誠(東京医歯大・消化器内科), 渡辺 守(東京医歯大・消化器内科)
抄録 【目的】難治性潰瘍性大腸炎に対して、以前よりシクロスポリン(CsA)が使用されてきたが、近年タクロリムス(Tac)、インフリキシマブ(IFX)が承認されこれまでより手術を回避できる症例が増えてきている。Tacは同じくCalcineurin inhibitorであるCsAより強力な免疫抑制作用を持つとされているにもかかわらず、これまで血中トラフ値の上昇に時間がかかり、特に重症例では病勢を抑えきれず薬剤の効果発現前に手術に至る症例も少なくなかった。今回我々はTacのbioavailabilityを向上するため持続静注にて導入し経口へ移行するHybrid Tacrolimus療法(Hybrid Tac)を行うことでTac経口、CsA静注とその有効性を比較検討した。【方法】当院で施行したCsA 43例中2009年4月以降に開始した17例、Tac高用量導入(初期投与量0.1mg/kg/日以上)20例、Hybrid Tacrolimus療法の6例を重症度、治療適応、目標血中濃度に到達するまでの日数、有効率を2週間後の Lichitigerスコア(Lスコア)にて評価した(寛解:治療後スコア4以下、有効:治療後スコア10以下かつスコア4点以上の低下)。また、Tac有効例はすべて1年間投与継続し寛解維持効果を検討した。【結果】1)治療前の臨床背景はCsA群がTacの2群に比し有意に重症例・ステロイド抵抗例が多かったが、LスコアはCsAとHybrid Tacは同等であった。2)短期有効率(有効以上)はHybrid Tacで有意に高くCsAとTac経口は同等(Hybrid Tac 100%、CsA 65%、Tac経口 65%)であった。3)血中濃度推移はCsA、Hybrid Tacでは1.3日、1.5日で目標値に到達しTac経口の5.9日より有意に早かった。また、短期寛解導入率はCsA53%、Hybrid Tac 67%、Tac経口20%であった。【結語】Tacは重症例にもCsAと同等に有用であった。Tac持続静注での導入は有効性が高く、血中濃度はCsAと同等に迅速に至適値に到達するため特に手術適応への早期判断を要する症例ではHybrid Tacがより有用である可能性が示唆された。
索引用語 潰瘍性大腸炎, タクロリムス