セッション情報 シンポジウム25(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

IBDの治療戦略 :内科治療の限界と外科治療へのタイミング

タイトル 消S25-4:

難治性潰瘍性大腸炎に対する内科治療の検討

演者 古川 竜一(東邦大医療センター佐倉病院・消化器内科)
共同演者 山田 哲弘(東邦大医療センター佐倉病院・消化器内科), 鈴木 康夫(東邦大医療センター佐倉病院・消化器内科)
抄録 目的)各種新規治療薬の登場で従来外科治療の対象となった難治性潰瘍性大腸炎症例(UC)に対しても寛解導入が期待できるようになった。そこで、当科における難治性UCに対するTacrolimus(FK506)の治療成績を中心に検討すると同時に、cyclosporin持続静注療法(CsA)・infliximab(IFX)の成績と比較検討したので報告する。方法)当院難治性UCにCsA・FK506・IFXを使用した154例(CsA:FK506:IFX=86:33:35、男性:女性=86:68、平均年齢39.2歳)を対象とし、CsA群、FK506群、IFX群における寛解導入率、手術回避率、その後の転帰を検討した。また、FK506群においては投与用量を0.025/mg/回(通常投与)、0.05/mg/回(2倍量投与)、0.075/mg/回(3倍量投与)とかえ、目標トラフ値(10~15ng/ml)へ到達する平均日数・有効率を算出した。成績)寛解導入率はCsA:FK506:IFX=41.8%:48.5%:32.4%、手術回避率CsA:FK506:IFX=74.4%:75.0%:82.4%、寛解維持率(1年)CsA:FK506=45.5%:26.8%であった。FK506において目標トラフ値への到達日数は、通常群:12.6日、2倍量群:7.45日、3倍量群:4.8日。投与開始後のトラフ値と2週間後のCAI改善率に正の相関を示した。また、投与開始後5日以内に最大トラフ値が8ng/mlを超える症例と超えない症例では寛解率に有意な差を示した。結論)FK506は難治性UCに対して速やかな寛解導入が可能であるが、再燃率が高く寛解維持療法に工夫が必要であると同時に早期にトラフ値を上昇させる事が寛解率の改善に重要な要因であることが示された。IFXは難治性UCにおいて短期的には手術回避には有効であるが、CsA治療と有効率に相違はなかった。FK506、IFX登場によって難治性UCの外科治療を回避し内科的寛解導入・維持が一層可能になった。
索引用語 潰瘍性大腸炎, タクロリムス