セッション情報 シンポジウム25(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

IBDの治療戦略 :内科治療の限界と外科治療へのタイミング

タイトル 消S25-9:

クローン病腸病変に対するInfliximab術後投与例の検討

演者 東 大二郎(福岡大筑紫病院・外科)
共同演者 二見 喜太郎(福岡大筑紫病院・外科), 前川 隆文(福岡大筑紫病院・外科)
抄録 目的:クローン病に対する外科治療において術後再発は最も重要なテーマであり、再発防止の可否は外科治療に踏み切るタイミングにも影響をおよぼす。Infliximab(以下IFX)は短期的ではあるが術後再発防止効果も報告されており、術後の補助的治療として現在最も期待されている薬剤である。今回自験例から術後投与例の経過を検証しその有用性とともに外科治療のタイミングについて考察した。対象:クローン病腸病変に対して初回手術後にIFXの投与を行なった58例を対象とした。男女比39対19、病型は小腸型17、小腸大腸型39、大腸型2例で、手術理由は穿通型28、非穿通型30例であった。方法:再手術をEnd pointとして術後経過を検討し、IFXの投与開始時期、投与法別に比較した。なお、術後経過観察期間は平均73.1±43.1ヶ月であった。結果:経過中に58例中12例(20.7%)に再手術を行い、累積再手術率は3年6.4%、5年16.9%、7年28.6%であった。IFXの投与開始時期ならびに投与法別の比較では、術後早期(1ヶ月以内)から投与を開始した20例(うち9例は術前からの継続)では再手術は1例だけであった【術後観察期間平均34.3ヶ月】。術後再発時から投与を開始した症例は38例で、うち継続投与を行なった28例での再手術は6例(21.4%)【平均観察期間85.5ヶ月】、非継続投与の10例では5例(50.0%)に再手術を行った【平均観察期間116.0ヶ月】。手術理由別には穿通型28例中6例(21.4%)、非穿通型30例中6例(20.0%)と差はなく、早期投与20例で再手術となった1例は穿通型症例で再手術理由は膿瘍であった【穿通型1/8・非穿通型0/12】。結語:クローン病腸病変の術後再発防止としてのIFX投与の有用性が示唆された。術後経過観察期間が短い検討ではあるが、術後早期からの継続投与でより有用性が高くなるものと思われた。IFXの再発防止効果が長期的にも明らかになれば外科治療にIFXを加えた新たな治療戦略につながることになり、腸切除範囲や入院期間まで含めて適切なタイミングで手術時期をはかることがさらに重要になると考える。
索引用語 クローン病, 術後再発