セッション情報 シンポジウム25(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

IBDの治療戦略 :内科治療の限界と外科治療へのタイミング

タイトル 消S25-10:

手術例からみたクローン病インフリキシマブ治療例の手術適応

演者 小金井 一隆(横浜市立市民病院・外科)
共同演者 杉田 昭(横浜市立市民病院・外科), 木村 英明(横浜市立大市民総合医療センター・炎症性腸疾患センター)
抄録 インフリキシマブ(以下、IFX)はクローン病(以下、CD)の治療に有用である。一方、治療中に手術を要する例もあり、手術例からIFX治療例の手術適応を検討した。【対象】CD手術例中術前にIFXを3回以上使用した77例(男50例、女27例)で、小腸大腸型60例、小腸型12例、大腸型5例、CD発症時年齢平均22歳、手術時平均34歳であった。57例に計画的維持投与が行われていた。【方法】IFXの適応となった病態と手術時の病態、問題点を検討した。【結果】1:IFX治療の適応となった病態は、のべ症例数で活動性病変30例、狭窄16例、内瘻15例(腸管膀胱瘻9、腸管腸管瘻7)、外瘻 (腸管皮膚瘻)11例、痔瘻10例、膣瘻4例、術後再発予防3例であった。2:IFX投与後に新たな病変が出現した症例が24例あり、のべ病変数で狭窄16例、膿瘍6例、内瘻3例、痔瘻2例、直腸瘻2例、外瘻1例、膣瘻1例、直腸癌1例であった。3:活動性病変のみで狭窄、瘻孔のないA群(29例)、狭窄のみで内外瘻を伴わないB群(12例)、内外瘻を合併したC群(24例)、肛門部病変のみのD群(9例)の4群で手術時の病態を比較すると、狭窄の合併率は84%(26例)、 92%(11例) 、54%(13例)、44%(4例)とA,B群で高く、瘻孔あるいは膿瘍の合併率は7%(2例)、8%(1例)、100%(24例)、22%(2例)とC群で高かった。腸管膀胱瘻合併9例中8例は手術時に膀胱瘻を認めた。計画的維持投与施行例の割合は各群で86%(25例)、50%(6例)、71%(17例)、67%(6例)とB群で低かった。4:内外瘻のいずれかを合併した24例中10例では術中所見で正常腸管が主病変に巻き込まれ、合併切除を要した。【結語】IFXによるCD治療時、活動性病変治療例や内外瘻合併例では維持療法中に、狭窄合併例ではより早期から新たな病変の出現や狭窄の進行に注意を要する。また、内外瘻合併例では病変部に正常腸管が巻き込まれる場合がある。時期を選んで病変自体の評価で治療効果を判定し、線維性狭窄や改善のない瘻孔性病変には手術を考慮すべきと考えられた。
索引用語 クローン病, 手術適応