セッション情報 パネルディスカッション1(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器疾患における安静時エネルギー代謝測定の意義と有用性

タイトル 肝PD1-1:

非アルコール性脂肪性肝疾患における非蛋白呼吸商測定の有用性

演者 是永 圭子(川崎医大・肝胆膵内科学)
共同演者 是永 匡紹(川崎医大・肝胆膵内科学), 日野 啓輔(川崎医大・肝胆膵内科学)
抄録 【目的】間接熱量計により測定される非蛋白呼吸商(npRQ)は糖質と脂肪の燃焼比率を反映し、エネルギー代謝の把握に重要である。そこで非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の進展評価におけるnpRQの有用性について検討した。【方法】対象は2009年4月から2011年1月までに病理組織により診断したNAFLDのうち、糖尿病に対し未治療であった30例(男/女=21/9、45±11歳)。なお、グリコーゲン貯蔵低下に伴いnpRQが低下する肝硬変は除外した。入院による12時間絶食の後、体組成計と間接熱量計による測定を行い、早朝空腹時のnpRQ・安静時エネルギー消費量(REE)を算出した。75gOGTTを行い、0分、30分、60分、90分、120分の血糖値・インスリン値(IRI)を測定し、血糖曲線下面積(AUC glucose)・IRI曲線下面積(AUC IRI)を算出した。これら結果をBrunt分類に準じた線維化(stage)とNAFLD activity score(NAS)と比較した。【成績】stage診断はF0/F1/F2/F3=6/9/8/7例であった。BMI・体脂肪率・内臓脂肪断面積・REEはstage間で差はなかった。npRQ値は、F0; 0.889±0.076、F1; 0.866±0.081、F2; 0.780±0.053、F3; 0.759±0.040であり、F2・F3を併せた線維化進展群(F2/F3群)はF0・F1それぞれの群より有意に低値だった(p<0.01)。空腹時血糖・HbA1cはstage間で差がなかったが、AUC glucose・HOMA-Rは、F2/F3群でF0・F1より有意に高値だった(p<0.05)。NAS別の検討でも、NASの上昇と共にnpRQは有意に低下した(NAS<5; npRQ=0.857±0.070、NAS≧5;npRQ=0.775±0.057)(p<0.01)。npRQはAUC glucoseとのみ負の相関を認めた(r=-0.672、p<0.01)。治療介入と共にALT・AUC glucose値が改善した症例では、npRQ値の上昇が確認された。【結論】NAFLD進行例でnpRQ値は有意に低下していたが、これは病態の一機序である耐糖能異常を糖燃焼率の低下として反映したものと推察する。多数のNAFLD症例から病期進行リスクのある症例を効率よく抽出するためにnpRQの測定は有用であり、経過把握の補助にもなる可能性がある。
索引用語 非蛋白呼吸商, NAFLD