セッション情報 一般演題

タイトル 132:

超音波内視鏡(EUS)にて経過を観察した急性胃蜂窩織炎の1例

演者 坂井 みき(京都府立医科大学 第三内科)
共同演者 藤原 淳(京都府立医科大学 第三内科), 塩見 聡史(京都府立医科大学 第三内科), 杉山 祐介(京都府立医科大学 第三内科), 滝本 見吾(京都府立医科大学 第三内科), 辰巳 菜津子(京都府立医科大学 第三内科), 中野 圭明(京都府立医科大学 第三内科), 安田 洋二(京都府立医科大学 第三内科), 山内 純子(京都府立医科大学 第三内科), 吉田 直久(京都府立医科大学 第三内科), 小西 英幸(京都府立医科大学 第三内科), 若林 直樹(京都府立医科大学 第三内科), 光藤 章二(京都府立医科大学 第三内科)
抄録 症例は36歳男性。主訴は左上腹部痛、発熱。薬剤の服用歴として2年前より抗うつ薬を内服中。家族歴は特記すべきことなし。飲酒歴はビール1l/日×20年間。現病歴は平成14年5月29日に焼肉を摂取し、大量に飲酒した。5月31日朝より左上腹部痛が出現し、近医にて鎮痛薬を処方されるも改善せず、6月1日夜間に当院救急外来を受診した。救急受診時は38.1℃の発熱を認めるも、結膜に貧血、黄疸を認めず。左上腹部の激痛を認め、次第に腹膜刺激症状を認めるようになった。血液検査所見ではWBC38,600/μl(好中球90%)、CRP40.3mg/dlと炎症反応の著明な高値を認めたため、上部消化管穿孔が疑われたが、同日施行した腹部造影CTにて明らかなfree airを認めず、全周性の胃壁の著明な肥厚(造影されず)と少量の腹水を認めた。引き続き施行した上部消化管内視鏡検査では胃粘膜のびまん性の肥厚、発赤、浮腫性変化と一部にびらんを認めたが潰瘍は認めなかった。腹部所見より汎発性腹膜炎を否定できず、絶食、抗生剤(IPM/CS 4g/日)の投与にて厳重に経過を観察した。徐々に症状、検査所見は改善したため抗生剤を中止し食事を開始したところ症状の悪化がみられたので、再度絶食とし抗生剤による治療を再開した。6月13日の上部消化管内視鏡検査では胃粘膜の肥厚、浮腫性変化は著変なく、新たに胃体上部から胃体下部にかけて数個の浅い潰瘍を認めた。同日に施行したEUSでは第3層が著明に肥厚し、その内部に微小膿瘍を疑わせる低エコー領域を認めた。胃液の培養検査にて起炎菌は検出されなかったが、臨床経過、CT、EUS像から急性胃蜂窩織炎と診断し、絶食と抗生剤(PIPC 2g/日)の投与を継続した。その後のEUSにて第3層の肥厚は著明に改善し、内部の低エコー領域も消失した。胃蜂窩織炎は診断が極めて困難であり、そのため予後不良例が多く外科的治療の方が予後良好と考えられてきたが、今回EUSにて経過を観察し、保存的治療にて治癒し得た症例を経験したので報告する。
索引用語 胃蜂窩織炎, 超音波内視鏡