セッション情報 パネルディスカッション1(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器疾患における安静時エネルギー代謝測定の意義と有用性

タイトル 消PD1-5:

肝硬変における栄養学指標の乖離と臨床背景の検討

演者 石川 智久(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科)
共同演者 鳥巣 勇一(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科), 石田 仁也(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】肝硬変(LC)では栄養学的不均衡の是正が脳症の予防や予後を向上させることが明らかになった。基礎代謝量(BEE)の把握は、栄養介入(NS)に際し必須となる。間接熱量計(id-CM)により呼吸商(RQ)と安静時代謝量(REE)を実測、予測基礎代謝量(P-BEE)との乖離、臨床所見とを比較検討した。【方法】肝細胞癌非合併LC 135例(62.3歳±11.7、男性80、女性55)を対象。C型60例、C+アルコール性(AL) 7例、AL 19例、B型 18例、PBC 13例、non B non C 14例、自己免疫性肝炎 2例、原因不明 2例であった。Child-Pughスコア(CPS)は、A:26例、 B:64例、C:45例であった。12~13時間の就眠、飲水のみで起床時にid-CMでRQとREEを測定、Harrison Benedict formula(HBF) にて予測基礎代謝量(P-BEE)は算定した。REE/P-BEE比(R/P)を算出し、R/PでH群:≧1.1、E群: 0.9<R/P<1.1、L群: ≦0.9に3群に分類、CPS、疾患別に検討した。【成績】RQは0.80±0.06と安静理想基準値に比し低値であった。REE 1304±271kcal、P-REE 1281±217kcal、両者はr=0.49(p<0.001)と相関が確認された。H群 38例(19.4%)、E群 71例(53.0%)、L群 26人(28.3%)となり、P-BEEとREEが±10%以上の乖離したHとL群は47.8%(64/134)であった。R/Pの3群階層化において年齢、性別、BMI及びRQに差異を認めなかった。CPSとR/Pに相関はなかったが、T.BilのみでL群(2.2±1.6mg/dl)とH群(4.0±5.9mg/dl)で有意差を認めた。CPSの群間比較では、RQ、R/P共に差異は認めなかった。しかし、REEとP-BEEはCPS-C(r=0.30)でA(r=0.50)やB(r=0.68)に比して相関が乖離していた。疾患群別の検討ではR/Pには差異はなかったが、REEとP-BEEは、C型 (r=0.55)とPBC(r=0.72)で有意な相関を認めた。【結語】HBFにおいて算出されるP-BEEとREEにはLCの約半数例で±10%以上の乖離がみられた。CPSとは異なるBEEとP-BEEの乖離もNSに際し、念頭におくべきと考えられた。
索引用語 肝硬変, 安静時代謝量