セッション情報 パネルディスカッション1(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器疾患における安静時エネルギー代謝測定の意義と有用性

タイトル 消PD1-7:

肝細胞癌に対する侵襲的治療時の栄養介入における呼気ガス分析の有用性

演者 須田 剛士(新潟大大学院・消化器内科学)
共同演者 山田 一樹(新潟大大学院・消化器内科学), 青栁 豊(新潟大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】侵襲的な治療を受ける肝細胞癌(HCC)症例に対する呼気ガス分析の有用性を栄養介入の観点から明らかとする。【方法】HCC治療のため入院した33症例を対象とし、入院日翌朝(D1:自宅を反映)と入院4日後の治療前日(D4:入院を反映)に非蛋白呼吸商(npRQ)などの栄養指標を測定した。HCCに対する治療侵襲度は血清アルブミン(Alb)の入院時に対する治療後減少率で、治療後快復速度は、治療後Albが最低値を示した日から退院までの日数を治療侵襲度で序した値を指標として検討した。【成績】Harris-Benedictの式により予測された基礎エネルギー消費量(BEE)と呼気ガス分析に基づく安静時エネルギー消費量(REE)との間に統計学的有意差は認められなかったが、33例中16例でBEEとREEの間に10%以上の差異が認められ、特に肝予備力の低下した例に多かった。入院中の摂取カロリー(1839±293kcal)は自宅での摂取カロリー(2019±509kcal)に比し有意に低値で(p=0.02)、かつD1(-1.96±4.85)、D4(-3.09±2.37)いずれにおいても窒素バランスは負であったにもかかわらず、npRQはD1(0.83±0.07)に比しD4(0.86±0.07)で有意に増加した(p=0.04)。持続動注化学療法以外の単独治療によりAlbが低下した13例の治療後快復速度は、npRQの入院後変化量(npRQ D4-D1)と有意な負の相関を示した(p=0.05)。神経精神機能検査の結果Minimal hepatic encephalopathy(MHE)が4例に疑われ、それらの症例は、脳症の認められない症例に比し有意に低いnpRQを示した(0.77±0.009 vs 0.84±0.007, p=0.02)。【結論】npRQはMHEやHCCに対する治療後の快復速度と関連しており、肝細胞癌症例の管理において有用な指標と考えられる。BEEによる必要カロリーの予測は不正確であり、かつ活動およびストレス係数を正確に設定することの困難性が示唆されることから、HCCに対する治療からの快復促進を目的とした栄養介入には、呼気ガス分析の結果を反映させることが重要と考えられる。
索引用語 肝細胞癌, 呼気ガス分析