抄録 |
【目的】HCCに対するTACE施行後に肝機能悪化を強く起こすような加療を行うと、治療効果なく寿命を縮めてしまうことが推測される。しかし、TACEによる肝機能悪化の早期予測についての報告はない。そこで今回我々は、TACE施行後の肝機能悪化の早期予測因子を前向きコホートにて明らかにすることを目的とした。【対象と方法】対象は当院で2008年12月から2010年4月にHCCと診断されTACEを行った109例である。年齢は中央値70.5歳(41-87歳)、性別は男性69例、女性40例で、全例肝硬変 (Child A: 57, Child B: 52) である。背景肝はB型肝硬変13例、C型肝硬変75例、アルコール性肝硬変33例、PBC 2例、AIH 1例、NAFLD 5例、原因不明1例である(重複あり)。TACEの治療前および後7日目において、早朝空腹時に間接熱量測定法を用いてnpRQ、REEを計測し、同時期に血液生化学検査も行い、検査値の比(治療後7日目/治療前)を計算した。また、治療前および後3カ月目において、肝機能の指標であるChild’s scoreを算出した。【結果】単変量解析にて、治療後3カ月目でChild’s scoreが悪化した群では、非悪化群に比べて、npRQ、血中PreAlb、Alb、ChEの比(治療後7日目/治療前)が有意に低下していた (n=0.007, 0.002, 0.014, 0.002)。これらを用いて多変量解析を行ったところ、npRQと血中preAlbが治療後3カ月目のChild’s score悪化の独立因子であることが明らかになった (p=0.039, 0.020)。傾向スコアにて作成した予測式はP=exp(-6.383×npRQ ratio-3.038×preAlb ratio+7.755)/(1+exp(-6.383×npRQ ratio-3.038×preAlb ratio+7.755))、AUC 0.713 (95% CI: 0.613 to 0.812)、Optimal cut-off pointは0.449, 感度57.1%、特異度79.1%であった。【考察と結論】npRQと血中preAlbの低下はTACE施行後の肝機能悪化の独立した早期予測因子である。予測式にて肝機能低下が予想される高リスク群においては、早期からの栄養介入により、肝機能悪化を予防できる可能性がある。 |