セッション情報 パネルディスカッション1(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器疾患における安静時エネルギー代謝測定の意義と有用性

タイトル 外PD1-9:

消化器外科周術期における安静時エネルギー代謝測定の意義と有用性

演者 塩見 尚礼(滋賀医大・消化器・乳腺・一般外科)
共同演者 佐々木 雅也(滋賀医大・栄養治療部), 谷 徹(滋賀医大・消化器・乳腺・一般外科)
抄録 【目的】エネルギー必要量の算出にはHarris - Benedict式から求めた基礎エネルギー消費量(pREE)に活動係数とストレス係数を乗じて算出する方法が広く用いられているが、ストレス係数はエビデンスに乏しいという見解が多い。一方間接熱量測定を用いた安静時エネルギー消費量(mREE)は実測値である。消化器外科手術の高侵襲手術の代表である胸部食道亜全摘,肝切除術,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)の周術期におけるエネルギー代謝に関して間接熱量測定を用いて検討した。【対象・方法】食道癌8名、胆膵癌12名、肝癌19名を対象とした。術前および術後7、14日のmREEとRQを間接熱量測定により算出した。【結果・考察】全患者の術前のmREEとpREEには有意な相関関係が認められた。胸部食道亜全摘術後7日目の mREE は27.3 ± 3.5 kcal/kg/dayで術前に比べて有意に上昇したが、術後14日は術前レベルまで低下した。術後7日のストレス係数は1.17と算出された。一方、RQに有意な変化はなく、糖質優位な代謝動態を示した。膵頭十二指腸切除術周術期術後7日目の mREE は25.7 ± 3.5 kcal/kg/dayであり、術前に比べて有意に上昇し、術後14日目も高かった。術後7日目のストレス係数には1.16であった。RQに有意な変化はなく、糖質優位な代謝動態を示した。肝切除術後7日目のmREEは22.3 ± 4.2 kcal/kg/dayで術前に比べて有意に上昇したが、術後14日は術前レベルまで低下した。術後7日のストレス係数は1.12と算出された。一方、RQは術後7日目で0.8と術前0.84より有意に低下して脂質優位な代謝動態を示した。周術期のストレス係数はこれまで高侵襲手術で1.2~1.5とされてきたが、我々の検討では1.1~1.2と低値であった。この値を参考にし、周術期の栄養管理を行えた。また、PPPDは術後14日目にもmREEは低下せず,最も侵襲が高度である可能性が示唆された。
索引用語 間接熱量計, ストレス係数