セッション情報 パネルディスカッション1(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器疾患における安静時エネルギー代謝測定の意義と有用性

タイトル 吸PD1-12:

膵性糖尿病患者の安静時エネルギー代謝測定の意義

演者 柳町 幸(弘前大附属病院・内分泌・代謝内科)
共同演者 丹藤 雄介(弘前大附属病院・内分泌・代謝内科), 中村 光男(弘前大・保健学科病因・病態検査学)
抄録 【背景】膵性糖尿病はインスリン分泌不全による糖代謝の破綻に加え、膵外分泌機能障害による脂肪、蛋白質、炭水化物の消化吸収障害を呈する疾患である。本疾患は尿中や糞便中への喪失エネルギーが多く、高度な栄養障害をきたす。治療法は消化吸収障害に対する消化酵素補充療法、糖代謝障害に対するインスリン治療にて喪失エネルギーを減じ、必要十分なエネルギーを投与することである。したがって、治療過程において喪失エネルギー量および、安静時エネルギー消費量(REE)を把握することは重要であると考えられる。今回、膵性糖尿病患者の補充療法前、補充療法後、補充療法長期経過後で安静時エネルギー代謝の変動を比較検討したので報告する。【対象】膵性糖尿病患者12例,健常者11例。対象各群にたいし身体計測(身長、体重、除脂肪体重(FFM))、血中栄養指標の測定、HbA1c、血糖値の測定を行なった。安静時エネルギー消費量(REE)は間接カロリーメーターを用いて測定し,Harris-Benedict式を用いて予測REE(pREE)を算出した。【結果】未治療の膵性糖尿病患者は糞便中脂肪排泄量が20±7.3g/日(5g/日以上で脂肪便)、HbA1c 9.8±4.3%であった。補充療法後、脂肪便は消失しHbA1cは7.16±1.43%へ低下した。補充療法前後で%REE/pREEが増加する群(A)と低下する群(B)に分かれた。未治療時の%REE/pREEはA群が106±16.5%、B群が120±19.5%であり、健常者の98.0±11%と比較して両群とも高値だがB群がより高かった。未治療時の栄養状態に関してはA群がB群よりも不良であった。【考察】未治療の膵性糖尿病患者では安静時エネルギー代謝が亢進するが、補充療法後は安静時エネルギー代謝が亢進する群と低下する群が存在した。亢進群は低下群よりも栄養状態が不良である傾向にあった。【結語】補充療法前後の膵性糖尿病患者の安静時エネルギー代謝の変動は栄養状態によって異なる可能性が示唆された。現在、補充療法後長期経過後の安静時エネルギー代謝の変動について解析中である。
索引用語 膵性糖尿病, 安静時エネルギー代謝