セッション情報 |
パネルディスカッション2(消化吸収学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)
過敏性腸症候群-消化吸収機能の側面から-
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タイトル |
吸PD2-2:食物繊維加工食品サイリウムの下痢型過敏性腸症候群への有効性
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演者 |
鈴木 英雄(筑波大・消化器内科) |
共同演者 |
溝上 裕士(筑波大・消化器内科), 兵頭 一之介(筑波大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】下痢型過敏性腸症候群(IBS)は近年増加傾向にあるものの、病状が長期にわたり不安定であることから治療に難渋することが多い。治療には5-HT3受容体拮抗薬、塩酸ロペラミドなどが用いられるが、腹部膨満の副作用を生じることがある。副作用がなく長期持続可能な治療法が求められる中、我々は食物繊維サイリウムに着目した。サイリウムはオオバコ科の植物プランタゴ・オバタの種を包んでいる食物線維で吸水保持性に非常に優れており、便通異常に有効とされている。今回我々は下痢型IBSに対しサイリウムの効果を確かめる目的で二重盲検試験を行った。【方法】対象はROME IIの診断基準を満たす下痢型IBS患者52人(男性19人、女性33人)。対象者をサイリウム群とプラセボ群にランダムに割り分け、それぞれ計4週間投与した。投与前後の排便回数、腹痛回数、便性状の変化(ブリストルスケール)を調査した。QOL評価としてSF36を用い、投与前後で各パラメーターの比較を行った。さらにBeck Depression Inventory(BDI)を測定し、抑うつ状態の変化を調べた。統計解析はχ2検定と分散分析にて行った。【成績】排便回数はサイリウム群が投与前の3.4回から投与後2.7回と約20%減少したのに対し、プラセボ群では変化はなかった。ブリストルスケールで泥状便を示す人数の変化を見たところ、サイリウム群では投与前の16人が投与後には3人と大幅に減少したのに対し、プラセボ群では投与前13人が投与後10人と減少がわずかで各群間に優位差を認めた(P=0.01)。 SF36は身体機能(PF)以外のパラメーターがサイリウム群で改善しており、全体的健康観(GH)ではプラセボ群との有意差を認めた(P=0.01)。BDIでは有意差は認めないものの、サイリウム群でよりスコアの低下が大きかった。各郡で腹部膨満などの副作用は見られなかった。【結論】食物繊維サイリウムは下痢型IBSの排便回数、便性状だけでなく、QOLと抑うつ状態の改善にも有効であった。サイリウムは下痢型IBSの新たな治療の選択肢として有望であると考えられた。 |
索引用語 |
下痢型過敏性腸症候群, 食物繊維 |