セッション情報 パネルディスカッション2(消化吸収学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

過敏性腸症候群-消化吸収機能の側面から-

タイトル 吸PD2-3:

糖尿病患者の腸感染後過敏性腸症候群では続発性乳糖不耐症も同時に起こる

演者 丹藤 雄介(弘前大附属病院・内分泌・代謝内科)
共同演者 中村 光男(弘前大・保健学科病因・病態検査学), 寺田 明功(てらだクリニック)
抄録 【背景・目的】糖尿病(以下DM)患者では、神経障害をはじめとする様々な原因の排便障害や腹部症状が問題となる。一定の割合で過敏性腸症候群(以下IBS)や乳糖不耐症(以下LIT)合併例が含まれると考えられるが、病態が複雑であり的確な診断や治療が行われていないことも考えられる。近年、IBSやLITの研究の進歩により、新しい病態や治療法などが提唱されている。今回、DM患者におけるIBSとLITについて、排便障害や腹部症状の有無と推移を調査し、DM患者における両疾患合併の臨床像を検討したので報告する。【方法】対象は当科および関連病院通院中DM患者320名。IBSは、Rome III診断基準によって診断した。LITは、乳糖20g経口投与後の血糖上昇が10mg/dl未満,または呼気中水素濃度の上昇が前値に比し20ppm以上で診断した。二糖類分解酵素阻害薬服用中のDM、膵性DMなど検査に影響のある疾患や病態の患者は除外した。平成22年10月~平成23年3月までの6か月について排便障害と腹部症状の推移を問診票で調査し、同意が得られた患者については、呼気検査で追跡調査を行った。【成績】期間中、対象の76.9%(246名)にIBSの診断基準もしくはLITが疑われる排便障害もしくは腹部症状があった。放屁増加と2回以上連続する下痢または軟便が多かった。器質的疾患除外ができて新たにIBSもしくはLITと診断したものはそれぞれ12名,8名であった。そのうちの5名と7名に先行する腸感染症があった.IBSの5名は一過性にLITも合併していた。246名中、DM神経障害として既に治療されていたものは46名であったが、今回の検討で5名が新たにIBSと診断された。【結論】DM患者における新規の排便障害や腹部症状の出現では、DM神経障害だけではなく、腸感染後IBSや続発性LITを念頭において診療に当たることが必要である。また,DM患者の腸感染後IBSでは続発性LITを高率に合併するため一定間隔で複数回の乳糖負荷試験を実施することが診断、鑑別に有用である可能性が示唆された。
索引用語 腸感染後過敏性腸症候群, 続発性乳糖不耐症