セッション情報 パネルディスカッション2(消化吸収学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

過敏性腸症候群-消化吸収機能の側面から-

タイトル 消PD2-5:

大腸刺激時の局所脳活動と下垂体副腎皮質反応に対するcorticotropin-releasing hormoneの増強作用

演者 田中 由佳里(東北大・行動医学)
共同演者 金澤 素(東北大・行動医学), 福土 審(東北大・行動医学)
抄録 【目的】過敏性腸症候群(IBS)に於いてストレスの鍵物質であるcorticotropin-releasing hormone (CRH)が病態を左右すると考えられる。我々は健常成人へのCRH投与により、大腸刺激時の局所脳活動と下垂体副腎皮質反応が増強するという仮説を検証した。【方法】対象は健常男性16例である。CRH投与群(n = 8)とplacebo投与群(n = 8)を比較した。直腸にバロスタットバッグを挿入・留置し、Synectics Visceral Stimulatorに接続、偽(0 mmHg)、低度(20 mmHg)、高度(40mmHg)大腸伸展刺激をランダムに加えた。更にCRH 2μg/kgを静注し、同様の刺激を加えた。刺激毎にH215Oを静注し、PETによる局所脳血流量を測定した。各刺激時に血中ACTH、cortisol、ordinate scaleを測定、脳画像はSPM2にて分析した。【成績】CRH投与は、偽刺激と比べた40mmHgで右島、橋、分界条床核をplacebo投与に比べ有意に賦活した。血中ACTHは二元配置分散分析にて有意なCRH (CRH vs placebo, p = 0.012)、刺激(0, 0, 20, vs 40 mmHg, p = 0.026)、CRH x 刺激交互作用(p = 0.035)を示した。post-hoc testでは、CRH投与下に40mmHg刺激を受けた時のACTHが有意にplacebo投与下の40mmHg刺激より高く(p = 0.011)、血中cortisolもACTHに類似の動態を示した。ordinate scaleに有意差を認めなかった。【結論】血中CRHの増加が内臓刺激時の内的身体感覚、視床下部抑制系、陰性情動に関係する局所脳を更に刺激することが明らかになった。IBSの病態解明において脳腸相関の重要性が示唆される。
索引用語 過敏性腸症候群, 脳腸相関