セッション情報 シンポジウム14(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性消化管障害の病態と治療

タイトル 消S14-9:

FD患者における睡眠障害と臨床症状および胃排出能との相関関係の解析-nizatidineによるcross-over試験の試み-

演者 二神 生爾(日本医大・消化器内科)
共同演者 新福 摩弓(日本医大・消化器内科), 坂本 長逸(日本医大・消化器内科)
抄録 (背景・目的)機能性ディスペプシア(FD)患者は、随伴症状としてのGERD・IBS症状を比較的高率に合併していることが知られている。実際、我々の報告でもFD患者、NERD患者は胃排出能の障害を、それぞれ30%程度合併している(Shindo T, et al. Digestion, 2009)。NERDの逆流症状と睡眠障害の相関関係は、近年注目を浴びているが、FD患者の睡眠障害の詳細や消化管運動機能との相関については報告がない。今回、睡眠障害に関し、FD患者と健常者における比較検討を行うとともに、一部の症例で薬剤の介入試験を行い、興味深い知見を得たので報告する。(対象と方法)Rome III基準のFD患者(n=82)に対し、GSRS日本語版、ピッツバーグ睡眠質問表(PSQI)、STAI質問表によりスコア化した。胃排出能は13-acetate呼気試験を用いた。健常者群は52名とした。一部のFD群に関しては、nizatidineとrebamipideによるcross-over試験を行い、投与前後でのGSRS, PSQI,胃排出能を評価した。(結果)FD群におけるPSQIの合計スコアは6.67±0.40であり、健常者群4.67±0.28に比較し有意に高値であった。FD群におけるPSQIのスコアと心窩部痛(p=0.003)、心窩部灼熱感(p=0.013)、早期飽満感(p=0.015)、酸逆流(p=0.009)とのあいだには有意な相関関係を認めたが、健常者群においては有意な相関関係をいずれも得られなかった。加えて、FD群、健常者群ともにPSQIのスコアとSTAIの質問表スコアにおいて有意な相関関係を認めた(p=0.001; p=0.001)。また、胃排出能の指標であるTmax値はFD群ではPSQIスコアとの間に相関関係は認めないものの、健常者群においてはTmax値と主観的睡眠スコアとの間に有意な相関関係を認めた。Nizatidineのcross-over試験ではFD患者18例中、12例で胸焼けの改善(responder)を認め、responderにおいては、有効睡眠時間スコア自体も有意な改善が確認された。(結論)FD群における睡眠障害は健常者に比較し、有意に高値であり、しかも多彩な臨床症状と有意に相関していた。
索引用語 機能性ディスペプシア, 睡眠障害