セッション情報 パネルディスカッション3(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

肝胆膵がん検診における検診施設と2次検査施設の連携

タイトル 消PD3-4:

膵癌早期診断を目指した検診-精検機関の連携

演者 深澤 光晴(山梨大・1内科)
共同演者 依田 芳起(山梨県厚生連健康管理センター), 榎本 信幸(山梨大・1内科)
抄録 【目的】膵癌の治療成績向上のためには無症状期での早期診断が必須であり,そのためには適切な検診システム,効率的な診断体系の構築が重要となる.検診施設である山梨厚生連健康管理センターと精検機関である山梨大学の共同研究により,膵癌検診の実状と検診発見膵癌の診療成績について解析した.【方法】2001年~2010年までの検診受診者のべ605,948例を対象として検診成績を検討,同時期に山梨大学で診療した膵癌203例(検診要精査53例,他疾患経過観察中32例,有症状発見118例)を対象として2次検査成績,治療成績を検討した.2009年以降は,検診で指摘された膵管拡張,膵嚢胞症例に対して積極的にEUSによる精査を行い,腫瘤性病変にはEUS-FNA,膵管狭窄にはERCP+ENPD細胞診による病理検査を施行した.2008年までを前期,上記診断体系を取り入れた2009年以降を後期とし,診断成績を比較した.【成績】検診成績:平均要精検率は0.14%,精査により75例の膵癌が発見された(発見率0.013%).発見契機はUS72例(96%):腫瘤53,膵管拡張34,嚢胞12,胆管拡張5,肝腫瘤3(重複あり),血液検査異常3であった.2次検査成績:小膵癌(TS1)の検査別腫瘍描出率はCT 80%,EUS 95%でありEUSが優れていた.EUS件数は前期83例/年から後期243例/年に増加し,それに伴い小膵癌診断例は前期1.5例/年から後期5.0例/年に増加,膵癌全体に占める小膵癌率(TS1/膵癌全体)も10%から19%に上昇した.またEUS-FNA,ERCP+ENPD細胞診導入によりTS1膵癌における術前病理診断能は前期33%から後期89%に上昇した.検診群と有症状群の比較では,切除率57%:29%,MST(月)19:10,1年生存率64%:44%,5年生存率28%:6%であり,検診群が有意に切除率,予後ともに良好であった.【結語】検診による無症状発見,2次施設でのEUSを中心とした診断体系により,早期膵癌発見に進歩が認められた.地域における検診-精検施設の連携により,膵管拡張や膵嚢胞などの間接所見を拾い上げ,積極的に精査を行うことで膵癌成績の向上が期待される.
索引用語 膵癌, 早期診断