抄録 |
【目的】1985年4月より当院健康管理センターでは施設検診時に上腹部臓器を対象とした超音波スクリーニングを施行してきた.今回はその検診システムとがん検診成績,事後管理の現況ならびに精査機関として当院外来における精検方法について報告する.【検診システム】当院では放射線技師3~4名が1日平均70件の超音波検査を担当し,受診者1名あたりの検査時間は平均5分間である.Sonoprinterにて記録した画像を担当技師と医師1名にて読影,超音波所見により放置,経過観察,条件つき経過観察,要精査,特に精査を要するの5段階に1次判定した.更に個別問診や血液生化学所見を加味して総合判定医により2次判定がなされ,最終的にA:放置,B:経過観察,C:要精査,CC:特に精査を要するの4段階のうちCC,C判定者とB判定者の一部(精査希望者)が要精検者として事後管理の対象となった.【検診成績】2010年3月までの間に当院施設検診をのべ331000名が受診し,2009年度の有所見率は75.3%(男性82.1%,女性65.1%),要精検率は4.8%であり,要精検者の精検受診率は73.2%であった.これまでに発見された悪性腫瘍は肝細胞癌22例,転移性肝癌11例,胆嚢癌9例,膵臓癌20例,腎臓癌23例など計96例(のべ受診者数の0.03%)であった.【事後管理】要精検者には当科外来あるいは希望する医療機関へ精検依頼書を発行している(当院外来受診率46.6%).3ヶ月後に返信された精検情報を集計し,未受診者には精検受診勧奨書類の送付,CC判定者には更に担当保健師より電話連絡等による受診勧奨を行い,また精検先医療機関への問い合わせにより情報把握に努めている.【精検方法】当院外来では2次検査として腫瘍マーカーの測定に加え,肝腫瘤性病変に対してはCECT,MRI(EOB),胆嚢病変に対してはEUS,CECT,膵腫瘤性病変に対してはCECT,MRI(MRCP)が選択される傾向にあり,精検受診者(肝胆膵全領域)における癌陽性率は1.5%であったが,肝異型過形成や膵管内乳頭粘液性腫瘍などの前癌病変を含めると陽性適中率は24.5%であった. |