セッション情報 シンポジウム14(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性消化管障害の病態と治療

タイトル 消S14-10:

FDの治療効果評価基準とQOL(背景因子、治療改善度)に関する検討. - JMMSからの知見 -

演者 中田 浩二(東京慈恵会医大・外科)
共同演者 原澤 茂(済生会川口総合病院), 本郷 道夫(東北大病院・総合診療部)
抄録 FDの治療効果の評価にはさまざまな基準が用いられているが、その妥当性は十分に示されていない。またFD患者ではQOLの低下がみられるが、その背景因子や治療改善度の詳細は不明である。【目的】JMMS〔FD疑診患者を対象とした全国規模の臨床比較試験;胃もたれ、胃の痛みが2週間以上続く適格患者を各投薬群(モサプリド[M]311例、テプレノン製剤[T]307例)に割付〕において上記を検討する。【方法】(1) 治療効果の評価基準〔(A) 患者印象:5段階評価、(B) 症状残存率:治療後総合(胃もたれ+胃部痛)症状スコア (SxS)/ 治療前SxS (%)、(C) SxS変化量:治療前SxS-治療後SxS、(D) SxS残存量:治療後SxSに対し、年齢、性別、病悩期間、投薬群(M、T)、治療前SxSを説明変数とし多変量解析により説明率(R2)と影響度(β)を検討、(2) SF-36(PCS、MCS)に影響を及ぼす背景因子を多変量解析により検討、また (3) M、TによるQOL改善度を比較した。【成績】(1) 基準(A)-(D)に対する有意な影響因子(β)は、 (A)では投薬群(-.454)>病悩期間(.089)、R2 0.214、(B)では投薬群(-.285)、R2 0.089、(C)ではSxS(-.475)>投薬群(-.237)、R2 0.295、(D)では SxS(.478)>投薬群(-.239)、R2 0.282、であった。(2) FD疑診患者ではPCS 47.3、MCS 44.3(平均値)とQOLの低下がみられ、有意な背景因子はPCSではSxS (-.310)>年齢 (-.270)、MCSではSxS (-.251)>年齢 (.127)>病悩期間 (-.105)>性別 (.101)であった。(3) QOLの治療改善度(Cohen’s d)はMではPCS -.100*, MCS -.410*、TではPCS -.104*, MCS -.189*(* p<0.05)であり、MCSの改善度はMが有意にすぐれていた。【結論】FDの治療効果評価には症状重度(SxS)に影響されない基準(A)(B)を用いるのが妥当と考えられた。FD患者のQOLにはSxSだけでなく年齢、病悩期間、性別も有意な背景因子であった。両治療薬ともにFD患者のQOLを改善したが、MCSの改善度はMが有意にすぐれていた。
索引用語 機能性ディスペプシア, 治療反応性評価基準