セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患動物モデルとtranslational research

タイトル 肝PD4-1:

ヒト幹細胞を用いる臨床研究の現状と展望

演者 田邊 裕貴(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科)
共同演者 高後 裕(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科)
抄録 ヒト幹細胞を用いる臨床研究(ヒト幹細胞臨床研究)は,臓器機能再生等を通じて,国民の健康の維持並びに疾病の予防,診断および治療に重要な役割を果たすことが期待されるものである.ヒト幹細胞を用いる再生医療に関する厚生労働省の告示である「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」(指針)が平成22年11月1日に改正された.筆頭演者は,ヒト幹細胞臨床研究対策専門官として厚生労働省に勤務し,指針の運用と改正に携わった.その経験を基に,肝疾患を対象としたヒト幹細胞臨床研究を実施する際の概要について述べる. 将来有用な医療に繋がる可能性を秘めたヒト幹細胞臨床研究が,社会の理解を得て適正に実施・推進されるよう,個人の尊厳および人権を尊重し,かつ,科学的知見に基づいた有効性と安全性を確保するために,ヒト幹細胞臨床研究にかかわるすべての者が尊重すべき事項を定めることを目的として,指針は策定された.臨床研究を実施する際のプロトコールの妥当性,被検者の安全性,個人情報の保護,インフォームド・コンセントの手続き等の基準が示されているが,更に,ヒト幹細胞を投与することの特殊性に鑑みて,無菌性の確保,品質管理,専用作業区域の確保等の技術的な要件が付記されている. ヒト幹細胞臨床研究の実施に当たり,研究責任者は添付資料を含めて実施計画書を作成し研究機関の長に申請する.その機関の長は,まず倫理審査委員会の意見を聴き,次いで厚生労働大臣の意見を聴いた上で,当該臨床研究の実施を決定することが求められている.厚生労働大臣は,指針に対する適合性についてヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で審議し,意見を述べるものとされている.平成23年1月までに,計35件のヒト幹細胞臨床研究が審査委員会で了承され,その中には肝疾患を対象とした研究計画も含まれる.今後更に,難治性の肝疾患に対する再生医療の応用が期待されるため,研究者は基礎研究から臨床応用までの適切なトランスレーションのプロセスを熟知することが肝要である.
索引用語 幹細胞, 再生医療