セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患動物モデルとtranslational research

タイトル 肝PD4-2:

ヒト肝細胞キメラマウスを用いた新しい抗HCV療法の開発

演者 平賀 伸彦(広島大大学院・分子病態制御内科学)
共同演者 今村 道雄(広島大大学院・分子病態制御内科学), 茶山 一彰(広島大大学院・分子病態制御内科学)
抄録 【目的】uPA-SICDマウスにヒト肝細胞を移植することにより,肝炎ウイルス感染に寛容となるヒト肝細胞キメラマウスが作製される.これまでわれわれは,本マウスを用いて,臨床応用を目的とした新しい抗HCV療法の開発を行ってきた.
【方法・結果】1)IFN-α/ME3738併用療法:HCV感染マウスにソヤサボゲノールB誘導体(ME3738)を1週間経口投与することにより,IFN-α単回投与後の肝臓内ISGs発現作用が増強された.4週間のIFN-α/ME3738併用療法は,IFN-α単独療法に比べ,マウス血中HCV RNA量を有意に低下させた(明治製菓株式会社との共同研究).2)PS-ONによる感染予防:HIVのentry阻害剤であるPhosphorothioate oligonucleotide (PS-ON)は,培養系においてHCVのentry阻害作用を認めた.マウスへのHCV投与前日から5日間,10 mg/kgのPS-ONを連日腹腔内投与した.HCV感染をコントロール群では7頭全頭に認めたのに対し,PS-ON投与群では7頭中1頭(14%)のみに抑制され(p=0.001),PS-ONがHCVの感染予防薬となる可能性が示された(米国NIH肝疾患分野との共同研究).3)DAA併用療法:HCV感染マウスへプロテアーゼ阻害剤(telaprevir)あるいはポリメラーゼ阻害剤(MK0609)を単独投与すると,いずれも投与中,耐性ウイルスによるbreakthroughを認めた.しかし両薬剤の併用投与は,速やかにマウス血中HCVを陰性化させ,肝臓内からHCVを排除させた.標的の異なるDAA併用療法はIFN製剤を使用せずHCVを排除する新しい治療法として有用である(田辺三菱製薬株式会社との共同研究).4)肝由来リンパ球療法:肝移植時に回収された肝還流液中のリンパ球をIL-2存在下で3日間培養し,HCV感染マウスに投与した.コントロール群に比べ,マウス血中HCV量を有意に低下させ,この抗HCV効果はIFN-γを介した作用であった.肝移植後の肝由来リンパ球による抗HCV療法の有用性が示された(広島大学移植外科との共同研究).
【結語】ヒト肝細胞キメラマウスを用いた感染モデルは,臨床応用を目的とした新しい抗HCV療法の開発に有用である.
索引用語 ヒト肝細胞キメラマウス, HCV