セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患動物モデルとtranslational research

タイトル 肝PD4-3:

ホストのスフィンゴ脂質合成系を標的とした抗HBV薬のキメラマウスにおける検討

演者 杉山 真也(名古屋市立大大学院・病態医科学DELIMITER国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センター)
共同演者 田中 靖人(名古屋市立大大学院・病態医科学), 溝上 雅史(国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センター)
抄録 【目的】現在のB型慢性肝炎の治療は核酸アナログが主流だが,耐性ウイルスの出現を避けられず,近い将来,多剤耐性ウイルスの存在が問題になると想定されている.本研究では,耐性の出現しにくい宿主因子を標的とした薬剤の開発を進め,中でも新規のスフィンゴ脂質合成阻害剤の抗HBV作用について検討した.【方法】新規薬剤としてセリンパルミトイルトランスフェラーゼ (SPT) 阻害剤(Nat Chem Biol 2005)を使用した(NA-der). 薄層クロマトグラフィー(TLC)でスフィンゴ脂質合成阻害能を確認した.野生型のHBV発現コ ンストラクトに薬剤耐性変異を導入し(L180M,M204V,S202GもしくはT184L),in vitroとin vivo(ヒト肝細胞置換キメラマウス)でインターフェロン(IFN),NA-der,核酸アナログ製剤を組み合わせて添加した.各HBV遺伝子型でも実施した.【結果】TLC展開によりNA-derのスフィンゴミエリン合成阻害を確認した.NA-derのウイルス複製の50%抑制濃度(EC50)をin vitroで検討したところ,野生型と各エンテカビル(ETV)耐性ウイルスで共に約3μMであり,耐性変異に依存しなかった.各ETV耐性ウイルスにNA-derとETVを併用すると,ETV単剤で300nMであったEC50が約70nMとなり,抗ウイルス効果は増強した.キメラマウスにおけるNA-derの単独投与では強いウイルス抑制効果を示さなかったが,ETV単独で1 log/mlのウイルス減少を認め,NA-derと併用することで2 logの減少を認めた.PEG-IFN単独では薬剤耐性株の1 log/ml程度の減少を認めたが,PEG-IFNとNA-derの併用群では,PEG-IFN単独に比べて2 log以上の減少を認めた.この相乗効果はHBV遺伝子型に関わらず再現された.【考察】NA-derを既存薬の組合せでHBVの複製を抑制した.この相乗作用は,核酸合成阻害とスフィンゴ脂質合成阻害という作用機序の異なる2剤を使用した結果であると推察された.現在は,HBV複製に関わる脂質分子の同定を進めている.
索引用語 HBV, キメラマウス