セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患動物モデルとtranslational research

タイトル 肝PD4-5:

HCV持続発現マウスを用いたHCVワクチンの開発

演者 木村 公則(がん・感染症センター都立駒込病院・肝臓内科DELIMITER東京都医学総合研究所・感染制御プロジェクト)
共同演者 小原 道法(東京都医学総合研究所・感染制御プロジェクト)
抄録 【目的】我々はHCV遺伝子組換えワクチニアウイルス(HCV-RVV)株を樹立し、HCV持続感染モデルマウスを用いて治療ワクチンとしての有用性を検討した。【方法】Cre/loxPシステムでHCV遺伝子を導入したTg(Cre/loxP/HCV-Tg)マウスと、IFN誘導性のCreを発現するTgマウスを交配させ、任意の時期にHCV遺伝子をスイッチング発現するTgマウスを作製した。宿主の免疫応答を活性化するために、ナイーブなsplenocyte(CD45.2)をTgマウスに投与し、肝臓におけるHCV蛋白の発現や肝臓、脾臓リンパ球の解析を行った。次に、HCV-RVVはHCVの構造蛋白質を主に発現するCN2、非構造蛋白質を発現するN25、全蛋白質を発現するCN5を用いた。Tgマウスに単回皮内接種し、接種後1週および4週のマウスにおいて1)肝臓におけるHCV蛋白の発現量, Oil-red-O、PAS染色2) Serum ALT, cytokine, chemokine level 3)肝臓、脾臓リンパ球での抗原特異的CTLsの検出などの解析を行った。【成績】splenocyteをTgマウスに投与後、一過性のHCV蛋白量発現の低下を認めた。肝臓内のリンパ球の解析から、ドナーの細胞ではなく宿主のNK細胞の活性化が認められ、これらの抗ウイルス効果はNK細胞を除去することにより認められなかった。また、HCV-RVV接種後1週のTgマウス肝臓では各接種群でHCV蛋白の減少が認められなかったが、4週ではN25接種群が減少していた。またN25接種群では接種後1週で肝臓の索状構造や肝細胞のsteatosisなど、HCV特有の形態学的な異常の正常化が認められた。さらにN25接種群では、他群と比較し血清IFNg, TNFa, IL-12, IL-6などの炎症性サイトカインが抑制されていた。【結論】我々が樹立したHCV持続発現モデルは、HCVの持続感染と宿主の免疫応答の関係を解析することを可能にした。さらに、HCV-RVV(N25)接種によりマウス肝臓におけるHCV蛋白の減少及び慢性肝炎症状の正常化が認められた。これらの知見は今後のHCVワクチンの実用化の可能性が示唆された。
索引用語 HCV, ワクチン