セッション情報 | パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)肝疾患動物モデルとtranslational research |
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タイトル | 消PD4-6:ハイドロダイナミック法を用いた遺伝子治療の前臨床研究 |
演者 | 上村 顕也(新潟大大学院・消化器内科学) |
共同演者 | 須田 剛士(新潟大大学院・消化器内科学), 青栁 豊(新潟大大学院・消化器内科学) |
抄録 | 【目的】我々は、ハイドロダイナミック遺伝子導入法(HGD)が有する肝細胞への高い遺伝子導入効率に着目し、新規遺伝子治療法の開発を目指している。これまでに我々は、Interventional radiology(IVR)とHGDを組み合わせることにより、大動物においてもHGDを安全に施行できることを報告してきた。本研究は、ヒト肝臓を対象とする遺伝子治療の前臨床研究として、HGDによる大動物への遺伝子導入が示す長期的な発現効果とその安全性の検証を目的とする。 【方法】イヌ、ブタを対象動物として各区域肝静脈にカテーテルを挿入し、hAAT (human alpha-1 antitrypsin)、あるいはhFIX (human factor IX)発現プラスミドを我々が開発したHGD機により導入する。対象動物の血中hAAT、hFIX濃度の定量、及びhFIX欠乏血漿を用いた凝固補完活性の測定、ならびに免疫組織学的解析により遺伝子導入効率を、生理学、血液生化学的な検索により安全性を評価する。 【成績】hAAT遺伝子導入群において、血中hAAT濃度は、導入後1週間で本蛋白欠損症の治療域である500μg/mlに上昇し、5週にわたり維持され、再投与も効果的であった。hFIX遺伝子導入群においては、血中hFIX濃度が導入後2週間で60μg/mlに上昇した。また凝固補完活性値は、導入前の4.6%から2週間で51.4%に上昇し、10週にわたり維持され、血友病Bに対する治療効果が示唆された。免疫組織学的解析では、hAAT、hFIXの発現が標的区域内の肝細胞で特異的に確認された。血液生化学的検索では、肝逸脱酵素が対照群の約10倍まで一過性に上昇したが、1週以内に正常値へ復した。また生理学的検査では、呼吸、循環動態も安定し、長期に渡り成長にも異常は認めなかった。 【結論】HGDを用いた遺伝子治療の前臨床研究として、大動物に対してIVR下にHGDを施行し、長期的な治療効果と安全性を確認した。本研究の成果は新規遺伝子治療法の開発にとどまらず、モデル動物作製への応用も期待されることから、消化器領域におけるトランスレーショナルリサーチの発展に寄与するものと考え、報告する。 |
索引用語 | 遺伝子治療, ハイドロダイナミック遺伝子導入法 |