セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患動物モデルとtranslational research

タイトル 肝PD4-7:

HCVタンパクとnon-chemical carcinogenによる肝発癌モデル-ミトコンドリア障害と肝発癌を繋ぐ動物モデルの応用

演者 仁科 惣治(川崎医大・肝胆膵内科学)
共同演者 是永 匡紹(川崎医大・肝胆膵内科学), 日野 啓輔(川崎医大・肝胆膵内科学)
抄録 【目的】ミトコンドリアは生体内のredox制御を行う中枢的器官であり、ミトコンドリア保護による酸化ストレスの軽減はC型肝炎のみならず、NASHやアルコール性肝疾患に対する重要な治療戦略である。われわれはHCVタンパクと鉄過剰による肝発癌モデルを作成し、ミトコンドリア障害に起因する肝発癌機序を明らかにしてきた。本モデルを使ったミトコンドリア保護作用を有する薬剤のスクリーニングシステムを開発する一環として、本邦で最も広く使用されている肝庇護剤である強力ネオミノファーゲンC(SNMC)のミトコンドリア保護作用について検討したので報告する。【方法】HCV全長遺伝子が組み込まれたHCVトランスジェニックマウス(HCV TgM)に微量(10μl/kg of body weight)のCCl4単回投与を行い、その後SNMCを投与して抗酸化作用を検討した、長期投与モデルでは鉄負荷HCV TgMにSNMC(1倍ならびに7倍濃縮)を週3回6ヶ月間腹腔内投与し、そのミトコンドリア保護作用について検討した。【結果】コントロールマウスには肝障害を起こさない少量のCCl4でもHCVタンパク存在下では有意なALT値上昇、TBARS上昇、GSHの減少とミトコンドリア形態異常を認めたが、SNMCはGSH合成の律速酵素であるγ-GCS(L鎖)の転写を促進し、これらの障害を有意に改善した。SNMC長期投与では鉄代謝に影響を与えることなく鉄負荷HCV TgMの肝内β酸化を有意に改善し肝脂肪化を著明に抑制した。この機序としてSNMCはβ酸化の律速酵素でありミトコンドリア外膜に存在するCPT1の発現低下を回復し、ミトコンドリア由来の活性酸素の産生を抑制した。【結論】本動物モデルを用いてSNMCのミトコンドリア保護作用という新たな薬効が明らかにされるとともに、種々の薬剤によるミトコンドリア保護作用のスクリーニングが可能になると考えられた。
索引用語 ミトコンドリア障害, SNMC