セッション情報 |
パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
肝疾患動物モデルとtranslational research
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タイトル |
肝PD4-9:肝細胞特異的p53活性化マウスは肝維化を自然発症する
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演者 |
小玉 尚宏(大阪大・消化器内科) |
共同演者 |
巽 智秀(大阪大・消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】p53は重要な癌抑制遺伝子の一つであるが、近年心不全、糖尿病等の非腫瘍性疾患にも関与していることが明らかとなっている。一方、肝線維化を主な病態とする慢性肝炎/肝硬変患者の肝細胞においてもp53の発現が上昇していることが報告されている。今回我々は、肝細胞でのp53の蓄積・活性化が肝線維化の進展に重要であると考え検討を行った。【方法】p53を抑制する機能を持つMdm2を肝細胞特異的に欠損させたマウスを作成し、肝細胞における内因性のp53活性化が肝臓に与える影響を検討した。また、慢性肝炎/肝硬変患者の肝組織において、p53調節遺伝子群の発現と線維化との関連について検討した。【成績】肝細胞特異的Mdm2欠損マウス(KOマウス)は肝細胞においてp53の蓄積並びに核内移行を認め、p53調節遺伝子群であるp21,Noxa,Baxの発現上昇を認めた。KOマウスは6週令において肝に線維化を自然発症し、野生型マウスと比し肝組織中のI型コラーゲン遺伝子発現が有意に高値であった。また、KOマウスの肝細胞において線維化促進遺伝子であるConnective tissue growth factor (CTGF)の発現上昇を認めた。このKOマウスに対して肝細胞特異的にp53を同時欠損させたところ、肝細胞CTGFの発現は低下し、肝線維化も完全に消失したことから、肝細胞でのp53の活性化は肝に線維化を自然発症させることが明らかとなった。また、p53野生型であるHepG2細胞を用いたin vitroの検討並びにp53発現プラスミドを用いたin vivoの検討より、p53がCTGFを正に制御していることが明らかとなった。慢性肝炎/肝硬変患者の肝組織では、正常肝と比しp53調節遺伝子であるp21並びにCTGFの遺伝子発現が有意に高値を呈し、p21とCTGF、I型コラーゲン其々の遺伝子発現の間に有意な正の相関を認めた。このことからp53の活性化、CTGFの発現上昇はヒトの肝線維化進展にも寄与している可能性があると考えられた。【結語】肝細胞におけるp53の活性化は、CTGFの発現を上昇させ線維化を誘導することから、p53-CTGF pathwayは肝線維化進展の治療標的になると考えられる。 |
索引用語 |
p53, 肝線維化 |