セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患動物モデルとtranslational research

タイトル 肝PD4-11:

末梢血CD34+細胞を用いた肝硬変症に対する肝臓再生療法-基礎研究から臨床研究へ-

演者 中村 徹(久留米大・消化器内科DELIMITER久留米大先端癌治療研究センター)
共同演者 鳥村 拓司(久留米大・消化器内科DELIMITER久留米大先端癌治療研究センター), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科)
抄録 【目的】骨髄由来の血管内皮前駆細胞(EPC)は1997年,浅原らにより成人ヒト末梢血単核球成分の一部(CD34+細胞分画)として存在することが示され,この細胞は炎症,虚血部位へ特異的に取り込まれるという特徴を有している.臨床応用可能なEPCとしての細胞材料をCD34+細胞と考え,我々は末梢血CD34+細胞を用いた肝硬変モデルラットに対する治療効果を検証し,非代償性肝硬変症患者に対する肝臓再生治療を開始したので報告する.【方法】基礎研究:健常ヒト末梢血より単核球分画を分離し,磁気細胞分離システムを用いてCD34+細胞を分離した.肝硬変モデルは,免疫不全ラット腹腔内に週2回3週間四塩化炭素(CCl4)を投与し作製した.その後,脾臓より生食水あるいはCD34+細胞を低・中・高用量群と分けて投与した.その後もCCl4は継続投与し,CCl4投与開始43日目に屠殺し,肝線維化・再生を評価した.臨床研究:対象は非代償性肝硬変患者で,年齢20歳~75歳,血清Alb濃度3.0g/dL未満である.2011年3月までに8例(HBV:1例,HCV:6例,ALD:1例)の患者に対し治療した.CD34+細胞は,G-CSF投与後末梢血単核球をアフェレーシスで採取し,磁気細胞分離法によりCD34+細胞を分離した.細胞投与は肝動注した.投与細胞数は採取量に応じて群別した.細胞移植後は24週後まで経過観察し,安全性・有効性を評価した.【成績】動物実験モデルにおいて,移植したCD34+細胞は肝内で血管内皮細胞,類洞内皮細胞,血管平滑筋細胞へ分化し,移植細胞数依存性に肝線維化抑制のみならず,肝再生促進,予後の改善を認めた.臨床研究において重篤な有害事象の発生はなく,安全性は確認された.有効性について,変化率で検討したが,血清Alb値の上昇,PT-INR値の低下,門脈血流の増加,内服利尿剤の減量・中止,SF36v2を用いたQOL評価の改善等の結果が得られた.【結論】前臨床研究結果を踏まえ,非代償性肝硬変患者に対し末梢血CD34+細胞移植を行った.結果は移植細胞数に依存して肝予備能が改善し,有効な肝硬変症の肝臓再生療法であることが示唆された.
索引用語 CD34陽性細胞, 肝臓再生療法